2012年12月26日水曜日

日本企業の巨額の内部資金余剰の秘密について

 下図は、日本の大企業(資本金10億円以上、ただし金融・保険を除く)を対象として、その内部資金から実物投資を差し引いた数字をグラフにしたものです。資料の出典は、財務省のホームページに掲載されている「法人企業統計」(時系列統計)です。


 このグラフは、日本経済の歴史と現状に関する非常に重要な事実を示しています。
 第一に、歴史的にみると、多くの企業は内部資金(企業内留保+減価償却費)を主要な投資資金源としており、不足分を銀行からの融資や株式発行によって調達してきました。1960年頃から1998年頃まで<内部資金マイナス実物投資>がマイナスとなっているのは、企業が内部資金だけでなく、外部資金(銀行融資など)に依存してきたことを示しています。
 第二の重要な事実ですが、1986年頃から1991年頃にかけてマイナス額が急激に増加しています。これは、日本の企業がバブル経済の消費ブームに際して設備投資を拡大していたことを示しています。
 第三に、バブルの崩壊後、内部資金の不足額が急速に縮小していますが、それにとどまらず、特に1998年頃からは大幅なプラスに転じています。
 この三番目の事実は、また別のきわめて重要な事実と関係しています。
 一つには、それはこうした内部資金の余剰が非正規・低賃金労働者を犠牲にして実現されたものだという事実です。1997年頃から非正規雇用が拡大してきたことについては、すでに指摘しました。もう一つは、一見すると個別企業にとっては合理的な思われる企業の行動が社会全体としては、人々の購買力を、したがって消費需要を縮小し、期待利潤率を引き下げ、結局は投資需要の縮小と経済的スランプをもたらしているという事実です。それはケインズの強調した「合成の誤謬」(fallacy of composition)に他なりません。それはまた企業が自分で自分の首を絞める行為でもあります。
 政治家は、金融や財政にのみ眼を向けるのではなく、経済社会で生じている本質的な事実を直視しなければなりません。

0 件のコメント:

コメントを投稿