2013年4月11日木曜日

公正な社会と生活保障賃金 1 最低賃金を引き上げよう

 OECDの統計データに載せられた日本の最低賃金率は、平均値(正確には中央値=メディアン)の50%に過ぎません。これはOECD主要国の中の最低値です。1998年に労働党政権によって最低賃金制(サッチャーによって廃止されていました)が復活したイギリスでも、その割合は日本より高く、またずっと日本より低かった米国でも、1994年のボルティモアにおける「生活保障賃金条例」および1999年以降の最低賃金率引き上げによって、日本より高くなりました。
 最低賃金率は、低賃金労働の拡大を抑制するための一つの有効な方策です。実際、最低賃金率の割合が1970年以降着実に引き上げられてきたフランスでは、低賃金労働の割合は低下してきました。逆に、最低賃金制のなかったドイツ、最低賃金制が廃止されていたイギリスおよびかなり高いインフレにもかかかわらずレーガンとブッシュの時代に(1999年まで)最低賃金率が改訂されなかったアメリカ合衆国では、低賃金労働が著しく拡大してきました。もちろん格差は著しく拡大してきました。
 つらい労働を強いられている人々も人間らしく生きるための所得を保障されるようなミニマムの賃金=生活保障賃金(Living Wage)を得ることができるように、社会運動を始めるときではないでしょうか? 米国でも、イギリスでも、ドイツでも、そのような運動は始まっており、むしろ高揚しているといってもよい位です。その成果も現れてきています。
 ところが、このように書くとかならず、それに反対する経済学者、エコノミスト、専門家なる人々が登場して、言います。曰く、最低賃金率を引き上げたら、彼らを雇っている企業が立ち行かなくなって、経営の縮小と解雇が行なわれる、最低賃金を引き上げた地域から流出する、と。
 しかし、本当にそうなのでしょうか?
 反対する経済学者の中には、現実の検討ではなく、理論的にそうだからと主張する者もいます。しかし、彼らの依拠する「理論」とはどのようなものなのでしょうか?
 
 そこで、本ブロブでは、以後、次に示す論点を検討・紹介することとします。
 1 米国・英国・ドイツ・日本における低賃金労働の拡大の要因
 2 英国と米国の「生活保障賃金」運動の経験(経過、結果)の検討
 3 雇用理論との関係の検討 
 4 日本における状態

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