資本主義経済(企業が労働者を雇用する企業家経済)では、失業が存在します。
なぜ失業が存在するのでしょうか?
それは、企業の雇いたい人数(労働需要)が企業に雇われたいと思う人数(労働供給)より少ないからです。いま前者をN、後者をLとすると、失業者 UNE は、次の式で示されます。
UNE=LーN
そこでマクロ的には(社会全体では)、失業は、LとNの両方を説明することによって完全に説明されることになります。
とはいえ、L(労働供給)を説明するのは、非常に難しいことです。それはまず人口に関係していますが、人口がどのように決定されるかを正確に説明できる人(経済学者)はいないでしょう。人は生まれてから少なくとも15年ほどたたなければ、労働力になることができません。また例えば15〜25歳の人口にしても、すべてが労働を希望するわけではありません。中等教育や高等教育を受ける人もいれば、疾病・障害で働くことのできない人もいます。このように労働供給は、基本的に歴史的・文化的・社会的・制度的諸要因によって決まっています。もちろん短期的には、賃金率を含む労働条件や経済状態も労働供給に影響を及ぼします。賃金率が上がるとき(または下がるとき)人が労働供給を増やすのか、それとも減らすのかは、経済学上の一大問題をなしてきました。また解雇された人がすべて求職活動を行うとは限りません。「求職意欲喪失者」として労働市場から退出する場合があることはよく知られています。
ここでは、L(労働供給)は、長期的および短期的な諸要因によって決定されるが、簡単には短期的(一年以内)には一定と仮定し、また長期的には「外生変数」であると仮定します。
この場合には、説明すべき事柄はもっぱら労働需要Nの変化にあることになります。それは一体どのように決定されるのでしょうか?
すでに以前のブログで示したように、現実の経済では、それは企業によって決定され、次のように、産出量 Y と労働生産性 ρ(一人・年あたりの産出量)の関数に他なりません。
N=Y/ρ (1)
ただし、Yとρは1年間の期間に対応する数値とする。
ここで、定義から、雇用率 ε は、N/L に等しくなり、失業率 u は、1ーN/Lに等しくなります。
ε=N/L (2)
u=1ーN/L (3)
次に、上の(1)と(2)から
ε=(Y/L)/ρ
y=Y/Lとすると
ε=y/ρ (4)
ここで、労働生産性 ρ を次のように二つに分解します。
ρ=r・t
ただし、r:労働生産性(一人・1時間あたりの産出量)、t:平均年間労働時間
これを(4)に代入すると、
ε=y/r・t (5)
次に、証明は省略しますが、数学的には、(5)の両辺の各要因の変化率は、次のように示されることがわかっています。
ε'=y'ーr'ーt' (6)
これで雇用率と失業率(1−ε)の変化を分析するための準備が整いました。
この2つの式(5)と(6)の意味は、次の通りです。
雇用率は、産出量の上昇に比例し、労働生産性(時間あたり)の上昇および平均年間労働時間の上昇に反比例する(逆は逆)。
これは、人々の常識に照らしても明白です。よく考えてみてください。ある工場である製品を生産する場合、産出量が多いほど、必要労働量は多くなります。他方、一人の労働者が1時間あたりに生産することのできる量(労働生産性)が多ければ、それだけ必要労働力は少なくなります。また年間の産出量や労働生産性(時間あたり)が同じならば、労働時間が多いほど必要労働力(人員)は少なくなります。
したがって上の式は、当たり前のことを数式で言い換えたに過ぎません。しかし、これこそが「現実世界の経済学」にとっては重要です。
失業の説明にとって重要なポイントはいくつかありますが、その一つは、上の数値が時間の経過とともに実際にどのように変化してきたかにあります。そこで日本を始めとする複数の国の場合に即して見ておきましょう。
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