2014年2月22日土曜日

EUROSTAT 賃金が高いほど失業率は低い!

 しばしば人件費(賃金率)が高いと低賃金の国に企業が逃げるので、失業率が高くなるという脅しともとれる言説が流されることがありますが、現実の統計はそれとはまったく異なった状態を示しています。
 
 EUROSTATの Statistical Atlas (統計地図)でそのことを確認してみましょう。
 次のサイトで簡単に見られます。 
   http://ec.europa.eu/eurostat/statistical-atlas/gis/viewer/

 ここから Labour market を選択し、次にUnemployment rate (失業率)または 時間賃金(Hourly Wage)を選択すれば、NUTS1〜NUTS3のいずれかの地域区分方法に応じた統計地図が見られます。

 まず最初に失業率です。大まかにいうと、ドイツの失業率が一番低く、ついでフランスやイギリス、周辺部(スペイン、イタリア南部、ポルトガル、ギリシャ、アイルランド、トルコなど)ではかなり高くなっています。



            失業率(単位%)、時間給(単位ユーロ)

 次は時間給です。スカンジナビア半島からドイツ、フランスの南部にかけて高賃金の地域が広がっており、そこから周辺部に行くにしたがって賃金水準が下がってゆきます。(目につく一つの例外はアイルランドです。)



 このように高賃金の国は失業率が低く、低賃金の国は失業率が高いというかなり強い相関が直感的に感じられます。
 実際、統計処理をしてもそのような相関が検出されます。
 またフランス、イギリス、ドイツ、イタリア、スペインといったそれぞの国の中でも地域をもう少し細分化して失業率と賃金水準の相関関係を分析しても同じ結果が得られます。

 高賃金が高失業の原因であるという『常識」が如何に誤っているかがよくおわかりいただけるかと思います。

 でも、どうしででしょうか?
 一つの最も重要な理由は明白です。前にも書きましたが、費用=収入だからです。高い賃金は高い所得を意味し、それは大きな有効需要を意味します。


2 件のコメント:

  1. 失業率が低いと賃金や物価が上がりやすくなるから当然ですね。ミスマッチ失業などの構造的失業の調整も必要なのでしょうが。

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  2. 労働分配率が顕著に下がってきたドイツが一番の絶好調であるというように、クロスセクションではなく時系列も含めたパネルでの分析が必要だと思います。

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