近年の株価上昇が「官製相場」、つまり日銀とGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)による株式購入によるものであることは、様々なところで指摘されています。
今日は、日銀とGPIFの統計にもとづいて、両者の株式購入(日銀ETFとGPIFの株式運用)の拡大の様子を示しておきたいと思います。
日銀の株式購入(ETF)は次の通りです。2年半の間に3兆円ほど増加しています。
出典)日銀の営業毎旬報告のデータより作成。
一方、平成24年3月末から今年6月末までの2年とちょっとの間に13兆円ほどの公的年金基金が株式の購入にあてられており、年金基金の総額に対する株式運用の比率も12%弱から20%弱にまで8パーセント・ポイントほど増加しています。実に巨額の資金が投資信託を通じて株式市場に流れたわけです。
日銀ETFとGPIFの両者を合わせて株式市場に流れ込んだ巨額の資金が株価を押し上げないわけがありません。
しかし、日銀とGPIFは、今後ともさらに株式市場に巨額の資金を流し込むつもりでしょうか? 言うまでもありませんが、日銀は、その性格上購入資金をいくらでも創り出すことができますが、ETFは本来の中央銀行が行うべき業務ではなく、いわば禁じ手です。一方、GPIFの資金には限りがあります。約130兆円の資金を日銀や市中銀行のように信用操作によって増やすことはできません。それが株式市場により多くの資金を流入させるには、他の方法で運用している資金を引き上げることが必要です。それがどこまで出来るのでしょうか?
もし外国人投資家が日本の株式を購入すれば、株価は上昇しますが、そのためには彼らが日本の株価上昇の期待(expectation)を持つことが必要となります。しかし、彼らとて日銀やGPIFの動きをじっと監視しているでしょうから、しかも最近の株価上昇が「官製相場」であることを当然知っていますから、そのような期待を持つかどうかは不明です。
いま日本の政府と黒田日銀は焦燥感を感じているでしょう。
「異次元の金融緩和」によってマネタリーベースを増やしたが、市中銀行の企業に対する貸付は増えていない。実質賃金は消費増税以降ずっと低下している。確かに大企業はわずかに貨幣賃金を引き上げはしたが、その引き上げ率は物価上昇率より低い。それでも貨幣賃金が上がった大企業はまだよいほうかもしれない。彼らが喧伝した物価上昇は実現したが、それは金融緩和と並行して生じた(また財務省によるドル買いと並行して生じた)円安・ドル高、つまり輸入品の価格上昇によるものであり、それ自体としては(つまり、輸出の拡大効果を除くと)経済にむしろマイナスの影響を与える。(輸入インフレが経済にマイナスの影響を与えることは、1970年代の石油ショックの結果を見れば、よくわかります。)したがって、何としてでも株価だけは上げつづけて「アベノミックス」がうまく行っているという印象は維持したい。集団的自衛権の問題でも、まともな専門家はすべて違憲を表明しており、安倍政権に対する不信感が有権者の間に広まっており、明らかに「潮目」が変わってきた。
ざっと、こんなところでしょうか。
さて黒田さん、どうしますか?
出典)GPIFのサイト「業績報告書」のデータにもとづき筆者作成。
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