2013年の前半に何故円安(・ドル高)になったのか、を調べてきましたが、為替相場の変動をもたらす理由の一つが購買力平価(PPP)にあることを指摘しました。これと密接に関係しているのが、貿易収支や経常収支の変化です。もし為替相場を購買力平価に等しくする国際市場の力が作用するなら、経常収支の黒字を計上している国は、通貨高(=当該国商品の国際価格高)となって貿易収支(→経常収支)の黒字を減らすという結果をもたらすことになり、逆は逆となるでしょう。
日本の場合、そのような関係は見られるでしょうか?
下図は、1980年から2013年までの実質実効為替相場と経常収支(対GDP比)の相関を示したものです。これを見ると確かに、<円安→経常収支の黒字拡大→円高→経常収支の黒字縮小>というサイクルが4〜5回ほど繰り返されてきたことがわかります。
特に1911年と1912年に経常収支の黒字が1997年の水準をしたまわるほどに低下しており、その後の1913年に実質実効為替相場が円安・外貨高に変わったことがわかります。
しかし、これも前に述べたように、現在では外国為替取引のほとんどは実需取引のためではなく、投機(資産取引)を目的としたものになっています。そこで、円安・ドル高の要因を調べるためには、そちらの側も調べることが必要となるでしょう。
2012年2013年頃の資本収支を見ると、FDI(外国直接投資)が大幅なマイナスとなっていることに気づきます。これは日本企業が余剰資金(内部資金ー国内設備投資>0)を外国への進出のために外国に持ち出したことを意味しており、もしそのための円売り・外貨買い(ドル買いなど)をしたのであれば、円安の一要因となったと考えられます。
とはいえ、同じ時期に証券投資の収支は大幅なプラスであり、外国人による日本の証券(株式)が買われています。これはむしろ円高の要因(外貨売り・円買い)につながるはずです。実際、当時、日本株式の購入を目的とする大規模な円買いが行なわれたようです。
ところが、それと並んで、どこからか大規模な円売り・ドル買いがあったともいわれます。
そこで、もう一つの重要な点、つまりこの当時日本政府(財務省の担当部署)が為替市場に対してどのような態度をとっていたか、つまり財務省の為替市場への介入があったのかなかったのかを確認しておかなければならないでしょう。 (続く)
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