安倍首相が立ち上げた経済再生本部(議長:安倍首相)というものがある。
「経済再生」だから、日本経済が荒廃していることを認めた上での組織だろう。その2013年6月14日の会議に提出された資料の「日本再興戦略(案)」というネーミングからも日本社会・日本経済が荒廃しているから復興させようというコンセプトがうかがわれる。
そこで、そもそもこんな日本にしたのはいったい誰なのかを問いたくもなるが、
それは措いておき、ここでは日本復興戦略会議の成長戦略の実現方法を述べた部分を紹介しよう。
「3 成長戦略をどう実現してゆくか?」では、まず「(1)異次元のスピードによる政策実行」となっている。「異次元のスピード」というのは、日銀の「異次元の金融緩和」(量的・質的緩和)を思い出させるが、いったいどんなスピードだろうか? 経済生産本部の会議では、別の会議でも、「スピード感」「スピーディ」にという語句がしばしばでてくる。
それはさて、それに続くのが「(2)国家戦略特区」を突破口とする改革加速」であり、全文を紹介すると次の通りである。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/dai7/saikou.pdf
ここでも、「スピード」が繰り返されており、下線部(これは私に引いたもの)のように、その他に、「内閣総理大臣主導で」、「国・自治体・民間の各主体が対峙するのではなく、三者一体となって取り組む」、「内閣総理大臣を長とする」特区会議が「トップダウンですすめるための体制を速やかに確立する」などの言葉が並んでいる。
なるほど、これはまさに森友学園や加計学園、それに最近指摘されはじめた国際医療福祉大学に関する疑惑で見られた構造そのものではないだろうか?
まさに、総理の御意向にしたがって、政府(内閣府、特区会議、財務省、財務局、文科省など)、自治体(大阪府、愛媛県、今治市、成田市など)、民間(森友学園、加計学園、国際医療福祉大など)が三者一体となって、「異次元のスピードで」実現してゆくという構図そのものだ。
いずれも総理大臣からのトップダウン方式で実現されている。もっとも、文科省(前川次官)が難色を示した案件もあるが、萩生田氏、木曽氏、和泉氏などが<総理大臣が直接いえないから、私から言う>と総理の意向を着実に伝達している(普通は圧力をかけるという)。そのほかは、自ら「忖度」するか、伝達に忠実にしたがっているらしい。
自治体や民間との関係も良好らしい。成田市と大学側、今治市と加計学園、総理と加計孝太郎氏、籠池氏と近畿理財局の三者一体の関係は、見ていても、見事というしかない。
「異次元のスピード」も見事に実現されている。これも実例をあげるのに、事欠かない。一番は、岡山理大(加計学園)獣医学部の2018年4月開学と尻を切ったこと。その他に、国際医療福祉大学でも、開学の尻を切り、パブリックコメントをほんの短い期間に制限し、特区の公募期間も超短期間に制限し、みごと国際医療福祉大学しか公募できないようにするという念の入れようである。
自治体からの補助金の決定も「異次元のスピード」だ。まだ認定されるずっと前から巨額の補助金が決定されている。その額も巨額である。
補助金といえば、本来「特区」とか「規制撤廃」というと、政府や自治体の公金の支出を抑えるために、民間にまかせるという「新自由主義」哲学にもとづくもののはずだが、今回の件では、133億円(加計学園)、8億2000万円の土地代値引き(森友学園、瑞穂の國小学校)、103億円の土地・補助金(国際医療福祉大)など、おおばんふるまいの公金が支出されることになっている(またはなっていた)。まさに、これも三者一体を示すモノに他ならない。
結論:森友、加計疑惑は、まさしく経済再生本部の「日本再興戦略」を忠実に実現したものに他ならない。安倍首相は、いまでもなぜ自分が批判されなければならないのか、反省するどころか、憤懣やるかたないのではないだろうか?
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