2017年8月7日月曜日

加計学園 疑惑の構図 1 「男たちの悪巧み」の意味 作戦変更

 加計学園をめぐる疑惑について調べてきましたが、私なりに分かったことがあるので、少し疑惑の構図について触れてみることとします。

 まず2015年のクリスマス・イブ(12月24日)に昭恵氏(安倍首相夫人)がフェイスブックで「男たちの悪巧み・・・(?)」とつぶやいたことを取りあげます。ネットでは、広く知られているので、詳しくはそちらに譲ることにしますが、安倍首相と加計孝太郎(加計学園理事長)の他に、高橋精一郎(三井住友銀行副頭取)、増岡聡一郎(鉄鋼ビルディング専務)の4人が酒を飲んでいる写真が掲載されています(下図)。


 これは4人のネポティズム(縁故関係)を示すものに相違ありませんが、私が注目するのは、「悪巧み」という表現です。実際、これは「悪巧み」に違いないでしょう。あるいは、作戦変更というべきかもしれません。そのことは、今治市の獣医学部開設に関する経過を時系列的に追うことによって、自ずから明らかになってきます。

 さて、現在、問題となっているのは、2014年にはじまる国家戦略特区に関わっていますが、その前に構造改革特区の制度がありました。小泉「構造改革」とともに始まった制度です。
 この構造改革特区に2007年度(第12次申請)から2013年度(第24次申請)にかけて今治市が獣医学部開設の新設申請を行っています。これは周知の事柄であり、今治市のホームページに提出資料が掲載されています。また2007年(第12次)から2009年(第17次)については、はっきりと予定事業者として岡山理科大学(加計学園運営)の名前を出して申請しており、これは文書に記されています。2007年というと、安倍晋三氏が首相(総理大臣)に就任した年です(9月26日)。

  http://www.city.imabari.ehime.jp/kikaku/kouzoukaikaku_tokku/
 
 ちなみに、構造改革特区の側の資料では、2007年~2007年の「申請状況一覧」が現在削除されています。「ページは移動しました」となっていますが、指示通り他のページをみても、ぐるぐる回るだけで、文書は出来てきません。しかし、これについては、措いておきましょう。


 加計学園を予定事業者とした申請はすべて却下されました。
 その理由を示す文書がやはり先に紹介した今治市のサイトに載っています。
 その一部をあげておきます。
 
 「現在、政府においては、6月を目途に取りまとめられる「新成長戦略」のなかで、ライフ・イノベーションによる健康大国戦略等を検討するとしています。 獣医師は、感染症の予防・診断、医薬品の開発、食の安全性の確保等において重要な役割を担っており、上記の検討の中で、獣医師養成の在り方についても、新たな視点から対応を検討してまいります。
 文部科学省としては、獣医関係学部・学科の入学定員について、獣医師養成が6年間を必要とする高度専門職業人養成であり、他の高度専門職と同様に全国的見地から、獣医師養成機能をもつ大学全体の課題として対応することが適切であります。
 このため、ご提案を特区制度を活用して実現することは困難であると考えます。」

 実際、政府(文科省を中心に)既存大学の獣医学部を活用した獣医師の新たな、ハイレベルな養成方法について検討し、実現しようとしていました。というのは、岡山理大が獣医学部を開設した場合、レベルの低下を招くことはあっても、国際化に対応した獣医師の養成など不可能と判断していたからです。(これらの詳細については、後に詳しく触れる機会を持ちたいと思います。)
 今治市は、繰り返し繰り返し同じ要望書を提出し、今治市を中心とする広域的な地域に獣医師養成大学・学部が存在しないこと、これが数十年来の今治市の要望であると主張しましたが、認可基準・設置基準を満たしていないという政府や文科省の判断を変えることはありませんでした。

 ところが、です。安倍晋三氏が再度首相(総理大臣)に返り咲き、しかも特区制度も「総理の主導」・「トップダウン」で「異次元のスピード」で岩盤規制を掘り崩すという「国家戦略特区」の制度に変わりました(2014年)。しかも、新制度では、国・自治体・民間が「対峙せず」、一体となって進めるということも決定されています。

 ここで作戦が変更されたわけです。その要点は、(1)最初に国家戦略特区で今治市に獣医学部開設の特区地域として認定する。その際、あえて岡山理大(加計学園)の名前を予定事業者とあげることはしない。それは作戦上どうでもよい。今治市に獣医学部開設の特区を認定することが重要である。そして(2)次に特区事業者の公募をする。これも出来レースだから、公募期間は短期間の方がよい。他の大学が公募してきては困るから。もちろん、応募するのは岡山理大だけにしたいが、他の大学が応募してきてもつぶせばよい。最後に(3)文科省の設置審にかけ、認可させればよい。文科省が難色を示すだろうが、首相官邸からの圧力をかける。こんなところでしょう。

 実際、この作戦通り事は進行しましたーーただし、途中まで。
 しかし、まず第一に、京産大が公募してきました。しかし、これは例の「広域的云々」(云々を国会で「でんでん」と読んだアホ首相がいますが、これも別の機会に詳しく)でつぶされました。第二に、予想通り、文科省(前川次官など)が難色を示しました(国家戦略特区の文書「日本再興戦略」の表現では、「対峙」しました。)そこで、設置審の応募期日(2017年3月31日)に間に合うように、2016年8月~10月にかけて、和泉、萩生田、木曽などの諸氏が文科省にさかんに圧力をかけました。「首相の御意向」だから聞けというわけです。
 そして、前川次官は辞任させられましたが、ついに内情を暴露する文書が公表され、前川氏の爆弾発言(いわゆる前川砲)がありました。
 文科相は、文書を隠匿するために必死になり、虚偽の答弁を繰り返しました。
 菅官房長官は、「怪文書」発言をしました。
 読売新聞は、前川氏の個人攻撃をしましたが、これは前川発言の価値をおとしめるために行ったことであり、官邸との相談なしには出来なかったことと推測できます。(警察出身の官邸の当局者が関与していたでしょう。)
 安倍首相は、もちろんすでに2007年から事情をよく知っていました。また事情に通じている人は誰でもそのことを知っていました。そこで、当初は、「急な質問」でもあり、より「整理せずに」答えたため、2015年6月の特区申請の段階で知っていると答えるしかありえませんでした。(当然でしょう。もし知らなかったと言ったら、皆が「嘘つき」と言ったでしょう)。しかし、その後、2016年夏に行われた「首相の御意向」を文科省に伝え、圧力をかけたという事実はない(かりに圧力があったとしても、それは自分の知らないところで他の人によって忖度によって行われたものだ)という趣旨のシナリオに変更せざるをえなくなりました。しかし、そのために、さらに嘘の上塗りをしなければならなくなりました。今年(2017年)1月20日まで予定事業者が加計学園と知らなかったという閉会中審査の答弁です。このシナリオ変更は、国会の閉会中審査の直前に首相秘書官によって念入りに作成され、首相にレクチャーされたという情報もあります。

 これが時系列を追って見た加計学園問題の展開の要点です。
 この裏には安倍首相とその周辺、加計学園、愛媛県・今治市、その他のネポティズム(縁故関係)と利権の構図が見え隠れしています(下図参照)。
 この利権の構図をより詳しく見ながら、上記の作戦がどのように進行したかを、さらにこの問題を追求していきたいと思います。

 

 (この項目続く)
 

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