為替相場をPPPから乖離させる要因・メカニズムを説明する前に、近年の円・ドル関係について一言。
これまで述べたことから明らかとなるように、ドル安または円安を導く最も確実な方法(政策)は、円に対する需要またはドルに対する需要を喚起することです。つまり、米国からすれば日本の金融資産を購入する動きを生み出すことであり、日本からすれば米国の金融資産を購入する動きを促すことです。そして、そのための最も効果的な政策手段は、国内金利を引き下げることによって相手国との相対金利を引き下げることです。
また多くの人に自国通貨安に適合的な「期待」を持たせることも手段となりえます。
実際、バーナンキ議長の下にあるFRBは、近年、なりふりかわまず、QE1〜3(量的緩和)、預金準備率の引き下げ、政策金利の引き下げを通じてそれを行なってきました。円買い・ドル売りの為替取引のトレンドは、おそらくそれと関連していたと思われます。
一方、安倍首相は、日本銀行の「独立性」を侵しながら、金融緩和策を通じて通貨供給を増やし、金利を引き下げようとしています。日本側からの逆襲が始まったとでも言えるでしょうか。
この経過の詳しい説明は、もう少し為替相場の決定要因・メカニズムを説明したあとで、1971年以降の為替相場(特にドル価格)について説明するときに、行いたいと思います。
最後に一言。
しばしば新古典派の経済学者は、自由市場に介入してはいけないと主張します。そして、TPPやらWTOのドーハランドなどを「自由貿易」の実現として賛美します。そこで、当然のことながら、上記のような日米為替紛争(自由市場に対する日米政府や中央銀行の介入)にも反対なのかと思いきや、そうでもないようです。その辺はかなりいい加減なのですね。
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