2013年12月1日日曜日

失業率の変化を説明する その4 ゼロ成長でも労働生産性が上昇する理由

 もし成長率がゼロでも、労働生産性の上昇率がゼロならば、雇用量=労働需要が減少する心配はない。しかし、先に述べたように、ほとんどの場合、ゼロ成長でも労働生産性は上昇し、そこで労働需要は低下することになる。
 それは何故だろうか?
 まず考えられるのは、労働生産性が労働の強度に関係していることは明らかであり、景気後退時・停滞時には労働密度が強化されると考えることができる。しかし、労働密度は短期的にはともかく、長期にわたって継続的に強められると考えることはできない。そこには自ずから限度があると考えるべきである。
 おそらく労働生産性の上昇は、機械・生産設備等の改善を通じた技術水準の上昇やそれにともなう熟練度の改善によると考えるべきである。すなわち労働生産性の上昇は、かつて E.Domar が示したように、設備投資に伴って生じると考えられることができる。そして、産出量がゼロ成長の状態にあっても、設備投資は行われている。
 そこで、資本蓄積率(固定資本ストックの成長率)と労働生産性の成長率とがどのように関係しているかを確認しておこう。
 下の図は、イギリスと日本における資本蓄積率と労働生産性との関係をプロットしたものである。
 

出典)固定資本ストックのデータは、Ameco online data による。それ以外は、前掲のGronigen University, The Centre for Growth and Developmentによる.

 この図から、1973〜74年と1979〜80年の二次にわたる石油危機時の異常値を除くと、両者はかなり高い相関関係にあったことが分かる。
 
 ところで、しばしば景気循環における好況期にも失業率がある水準以下に低下しないことをもって「構造的失業」と呼ぶ人がいる。この用語法には理解できない点がないではない。しかし、構造とは何かを説明しない限り、意味のない言葉に過ぎない。
 われわれの分析では、1970年代以降の高い失業率は、何よりも産出量=有効需要の増加率の低下、しかも労働生産性の上昇と比較した場合のそれ以外の何物でもない。
 

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