今年の3月に新潟大学を定年退職し、神奈川県の横須賀市に引っ越してきた。
もともと横浜の西部から鎌倉、横須賀、逗子、葉山、三浦市などは、小高い丘・岡や山が多く、そのため、民家も自動車が通らない不便な場所に建てられているものが多い。その場合は、バスを降りてから、あるいは自家用車の駐車場から、自宅までかなりの坂道を歩かなければならない。そのためもあり、横須賀市の人口はずっと減少しているらしい。特に高齢者が亡くなったり、丘陵地から降りたりしても、その後に住む人がいなくて空き家となるケースが多くみられる。一方、若者は通勤に便利な場所へ、しかも街中のマンションなどに住む傾向がある。
そのようなわけで、私の引っ越した先もまわり中がシニアーの人ばかり。私などは65歳でもまだ若いほうである。もちろん、これは今日本全体で生じていることであり、ここで取り立てて言うことはない。
そこで、このブログでも、しばらく少子化と高齢化に触れつつ、人口のことを検討してみたい。
さて、日本では、20世紀末に「生産年齢人口」(15~64歳)が減少しはじめ、またそれに少し遅れて総人口も減少しはじめたことは周知のところであろう。
この生産年齢人口減少および人口減少の事実(将来)は、今日では広く知れ渡っているが、人口統計的なデータを見ていた人、特に6歳人口や12歳人口、15歳人口、18歳人口の動向に敏感たらざるを得ない教育産業では、戦々恐々として見られていた。大学もその一つであり、私なども18歳人口がかなりのペースで減少するのに、私立大学が続々と新設されるのを見ながら、大丈夫だろうかと心配していたものである。
ところで、本屋さんで立ち読みしていると、たまに人口減少など怖くないという感じの本に出合うことがあった。私も、人口減少だ、人口減少だと騒ぎ立てるつもりはない。しかし、人口減少には何の問題もないと断言することには少なからざる抵抗を感じる。それはちょっと思考実験してみればわかるだろう。例えば(実際にはありえないが)今から女性たちが子供を一人も出産しなくなるとする。60年後、すべての人が60歳以上となり、59歳未満の人は一人もいなくなる。もちろん、これはあまりに極端な例である。しかし、それはあまりに急速な人口減少が大きな問題となることを示している。
では、外国ではどうなのか?
さしたりヨーロッパとアメリカ合衆国の場合を見ておこう。
その前に長期的には、合計特殊出生率(fertility、女性一人あたりの出生数)が約2であれば人口は安定し、それを超えていれば増加、それより低ければ減少となるが、これは少し考えればわかることであろう。
さてまずヨーロッパであるが、その率は、国・地域によってかなり異なっている。が、簡単に言うと、きわめて低い(1.5未満)のがドイツとその「衛星諸国」(イタリア、スペインを含む)である。ただし、ドイツの15-64歳人口は最近3年間は増加しているが、それはEU域内外からの、難民を含む移民の急増による。これに対して、かなり高いのが英国を含む北欧諸国とフランス(1.7~約2.0)である。また、それに加えて1990年代の経済危機・人口危機の中で大幅に低下していたロシアの出生率が最近顕著に上昇し、イギリス・フランスと同じ水準にまで回復してきた。(次の図を参照。)次にアメリカ合衆国であるが、こちらもほぼ2に近い。
http://i.imgur.com/EzAIuzq.png
こうした図を見ていて、ふと第二次世界大戦時の勢力配置を想起したほどである。
それにしても、同じ経済大国の中で、なぜ米英仏(プラス露)の出生率が1.7~2.0ほどの、生産年齢人口を維持する(あるいは急激な減少を招かない)安定水準にあり、ドイツとその衛星国、それに日本の出生率が労働人口の急速な減少を招くほど低いのか?
これが検討に値する大きな問題、しかし難問であることは言うまでもない。
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