以前たまたたま読んだ坂口安吾の「安吾新日本地理」シリーズが面白くて、しばしば安吾のエッセイを読むようになったが、「安吾人生相談」に「その6 暗き哉 東洋よ」と題した文章がある。
この文章は、ある高齢の女性の自殺とそれをめぐる夫たち(高名な学者とその弟子達)--「王様とそれをかこむ神がかりの徒」と坂口は言う--の対応を扱ったものだが、それはともかく、安吾は最後に次のようにつづる。
人間の倫理は「己が罪」というところから始まったし、そうでなければならんもんだが、東洋の学問は王サマの弁護のために論理が始まったようなものだから、分からんのは仕方がないが、
ああ、暗い哉。東洋よ。暗夜いずこへ行くか。
オレは同行したくないよ。
マスコミではほとんど報道もされないが、昨今も高齢者の自殺があいついでいるらしい。耳にしたくないような痛ましい死に方をした高齢の女性もいる。その時にどのような思いだっただろうか。
ああ、暗い哉。東洋よ。暗夜いずこへ行くか。
オレは同行したくないよ。
もちろこの東洋には日本も入っている。
そして、これは私の昨今の気持ちを表現するものでもある。
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