かなり重度の風邪を引いてしまい、何日か寝こんでしまいました。
さて、外国為替相場については、Ustream や Youtube などでも様々な予想者がFX取引について解説をしたり、自分の予想法のCMをしたりしています。例えばラジオNIKKEIの「夜トレ」などもその一つです。そのいくつかを聞いてみて、思ったことを書いてみます。
・まずFX相場の予想について、購買力平価(PPP)を基準にしている者は皆無です。これは言うまでもなく、ほとんどのFX取引が短期取引を想定しているのですから、当然といえば当然です。すべての人は為替相場が購買力平価から乖離していることを前提としているか、そもそも問題としていません。
・金利については、多くの予想者が重要視していますが、金利平価説の観点から重要視している者は皆無です。これも本ブログで説明した為替相場決定要因からすれば、当然です。そもそも金利の高い方にポートフォリオ資本移動が起こるのですから、金利平価説は謬説というべきでしょう。
・多くの予想者は、不確実性の支配を前提としています。これも当然です。確実な合理的期待が可能ならば、苦労しないはずです。そもそも、確実な合理的期待が不可能なのでFX取引を収益チャンスと捉えて参加する右人々が増え、ある人にはキャピタル・ゲインの取得が可能となり、反対にキャピタル・ロスを蒙る人も生まれるのですから。
そこで、誠実な予想者は、自分たちの予想とその根拠を質問されると、「それは難しいのですが、・・・」という前置きを置き、その上で、もっともらしくファンダメンタルズ(と彼らが考えるいくつか事情)、例えば貿易収支の動向、失業率、成長率、金融政策や財政などに触れます。しかし、彼らも決定的なことは言いません。それはファンダメンタルズは、FX相場に影響する要因であっても、決定要因ではないからです。それにファンダメンタルズとされている個々の要因が一方向を示しているのではなく、相互に矛盾していることは通例です。
・はっきりしていることは、為替相場がある一定期間は一定のトレンド(上昇または下降)を示したあと、逆転するだろうということだけです。しかし、トレンドがどれほどの期間、どれほどのペースで持続し、いつ反転するかは不明です。
ちなみに、トレンドはバンドワゴン効果によって増幅されます。例えばバンドワゴンがドル高を予想した「円売り・ドル買い」のとき、それに従う人々の流れは、ドル高の流れを増幅することになるでしょう。しかし、それにもかかわらず、いつかは必ず反転が生じます。
・そこで、心理学にもとづいた行動経済学の重要性に言及する者もいます。23歳のある予想者は、人は儲けている時には儲けを確実に確定しようと考えて、キャッシュイン(利益の確定)を図り、逆に損をしているときには、いつまでも損切り(損失の確定)を行なうことができずに、ずるずると損失を拡大させてゆくという愚をおかす、と言います。これは確かにその通りでしょう。しかし、自分が投機の渦中の中にいるとき、人はどこまで自己の置かれた状況について冷静に判断できるような合理的経済人でありうるのでしょうか。
ともあれ、言うまでもなく、キャッシュインを行なう人が多ければ、それは相場を反転する要因の一つになります。
今、円安・ドル高で利益を上げた人の中には、次に(3月から4月にかけて)さらに同じ傾向が続くのか、それとも反転するのか不安で不安でしょうがなく感じている人がいることでしょう。そのような人は自分の予想に中期の信任を持てないことを意味しています。しかし、中にはG20で日本の円安(ドル高、ユーロ高)がどのように取り扱われようと、強気でありつづける人もいるでしょう。総じて自分の予想を信任している人は、予想に反する要因を無視または軽視しようとします。
問題は、様々な人がいるという状況の中で、どのような行動を取る人が多数になるかです。
・要するに、FX相場を直接決定しているのは、人々の「期待」(expectation)であり、しかも、人々が自分の予想に対する「信任」(confidence)を強く持っているわけではないということ、また人々のこうした期待が現実の国際資本移動(特にポートフォリオ投資フロー)を引き起こす原因となり、通貨に対する需要と通貨の供給の変動をもたらし、為替相場を変動させるという事実に他なりません。
さて、とりとめのない話しになってしまったような気もしますが、予想を売り物とする人々(エコノミスト)の中には、それを出汁に自分が儲けたり、自社(証券会社)の利益を企んでいる人も多いので注意しましょう。
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