2013年2月17日日曜日

外国為替相場 その9 J.T.Harveryのメンタル・モデル


これまで述べてきたことからも明らかなように、外国為替相場の決定メカニズムを説明するには、一種のメンタル・モデルが必要になります。
 その一つとして、J.T.Harveyのメンタル・モデルを次に示します。
 図の左側から諸指数(indicators)、ベース要因(base factors)、過程(processes)があり、それらの結果として為替相場の期待が生まれます。しかし、期待された為替相場は実際の為替相場に等しくなるわけではありません。それは純証券投資の変化をもたらし、それを通じて為替相場を変動させます。しかし、為替相場は、バンドワゴン効果を通じて、またキャッシュインの欲求を通じて純証券投資に影響し、為替相場に影響を与えます。換言すれば、為替相場は単純な因果関係によって決定されるのではなく、「複雑系」(complex system)の一部であるということになります。
 図の意味を符合、→、+、− の意味を含めて説明します。
 例えば相対利子率(日本の利子率ー米国の利子率)が上昇したとします。日本の金利が相対的に上がるわけですから、日本への証券投資が増えると期待できるでしょう。つまり、金利の増加が証券投資(流入)の増加を期待させるわけですから、→の記号は「+」となります。すると日本の証券を買うための円需要が増加し、ドル供給が減るため、円高・ドル安を期待させます。(証券投資の増加の期待が円高・ドル安の期待をもたらすので、記号は「−」となります。なお、為替相場は邦貨建て、つまり1ドル=何円という表示法となっていることに注意してください)。為替相場の低下(円高・ドル安)の期待は証券投資(流入)を拡大させるでしょう。そして証券投資(流入)の実際の拡大は、期待通りに為替相場を低下させます。
 しかし、高金利と為替相場の低下(円高・ドル安)で利益を生んだ外国の投資家は利益を確定するためにキャッシュインを欲するでしょう。しかし、実際のキャッシュインは為替相場の動きを反転させる方向に作用します。一方、バンドワゴン効果は、まったく逆に作用します。
 その他に、まだ上で説明していない項目がいくつかありますが、図を見ながら、よく考えてみてください。(後日、説明します。)

 さて、2008年のリーマン・ショック以降、昨年末までドル安・円高が続いてきましたが、これはある程度まで米国の金融政策によって説明できます。米国の(日本に対する)相対利子率は低下してきましたが、それは下の図の通り、円高・ドル安をもたらしてきました。
 問題は、昨年末、安倍政権成立時からの逆転ですが、麻生氏が言うように「まだ安倍政権は何もしていない」のにどうしてなのかと問うことも可能です。しかし、安倍政権が日銀の中立性をおかしてまで金融緩和・低金利政策を実施することを決定したことは間違いありません。それが先行的に純証券投資と為替相場の期待を変え、実際の為替相場を変えている可能性はあります。
 



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