2013年11月17日日曜日

日本の異常な経済状態 賃金の長期的低下の持続


 日本では、1997年以降、従業員の給与総額(貨幣額)が絶対的に減少してきた。もちろん、それとともに一人あたりの給与額も低下している。
 このように書くと、不景気なのだからしょうがない、という人がいるかもしれない。確かにそうかもしれない。しかし、次の2つのグラフを見て欲しい。これらは2つとも財務省の「法人企業統計」から作成したものである。れっきとした政府の公式統計である。
 第1図は、資本金別に3つに分けて、各企業群の給与総額を示したものである。いずれの群でも給与総額は1997年以降低下してきた。
 第2図は、各企業群の「経常利益」総額を示したものである。この図がはっきりと示すように、少なくとも資本金が5千万以上の企業は、経常利益を1997年以降も増やしている。特に資本金が10億円以上の企業については、経常利益は大幅に増えており、2006〜2007年には戦後最大の規模に達してさえいる。
 言うまでもなく、経常利益は、大ざっぱには経済学でいう「利潤」に相当し、そこから法人税が支払われ、残余は配当(株主の所得)、企業の内部留保(投資資金として使われる)などに分かれる。
 法人企業統計をもう少し詳しく見ると、巨大企業が巨額の内部に資金を留保しながら、国内投資に利用せず、巨額の内部資金をためてきたことが知られる。このことは他の経済学者によっても指摘されてきたので、ここで繰り返す必要はないかもしれないが、念のために確認しておこう。また(巨大)株主や巨大企業の経営者がより多くの所得(配当や経営者報酬)を受け取って来たこともよく知られている。「法人企業統計」が語るこのような事実は、ロナルド・ドーア氏がその著書(中公新書)でも明らかにしているので、詳細はそちらで譲ることにしよう。
 ともかく、このグラフは、賃金総額・賃金率が低下する一方で、利潤が増加してきたことを疑問の余地なく明らかにしている。それはまた所得格差が拡大してきたことをマクロ的データを通じて示すものである。
 いったいこのことは何を示しているのか? それが次の問題である。

 第1図 従業員の給与総額(百万円)



 出典)財務省「法人企業統計調査」の時系列データ(2012年度)より作成。
 注)各企業群は、資本金の金額で区分される。賃金と利益の単位は百万円。

1 件のコメント:

  1. はてなで指摘されていましたが従業員の給与のグラフは間違っているそうです。法人企業統計で途中から分離された賞与を含めるのを忘れているとのこと。 http://upup.bz/j/my93352OiXYt2nvuW3LTbtU.jpg

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