2014年3月10日月曜日

地球気温の変化は太陽活動に関係しているのか?

 地球気温の変化が二酸化炭素量の変化の結果なのか、それとも太陽活動の変化の結果なのか、それとも両者に関係しているのか、本来、私のような素人の出る幕ではないはずですが、そうともまいりません。というのは、いくつかの理由がありますが、その一つは私の仕事に直接関係しています。
 私は、現代の経済変動ともに、過去の社会経済史を研究対象としており、したがって当然ながら過去の経済変動を調べることもあります。
 ところが、第二次世界大戦以後に大量に二酸化炭素が「人為的に」放出され始める以前から地球温暖化の時期があり、また場合によっては地球寒冷化の時期があったということになると、そのような気候変動が本当にあったのか、またそれを引き起こした犯人は何だったのか、について知りたくなってきます。
 ヨーロッパに関する限りでも、16世紀以降の穀物価格の変化、職人の賃金率の変化、穀物収量の変化など、様々な(といっても限りがありますが)データが蓄積されています。またおそらくそれらと関係すると思われる様々な事件や事象がありました。それらがどの程度、地球の気候変化に関係するものなのかを知ることは非常に興味を惹きます。
 その一つとして16世紀の価格革命(穀物価格の上昇)について様々な見解がありますが、経済史上有名なのは次の3つほどです。
 1 新大陸からの銀の流入による貨幣価値の低下によるインフレ。これは多分に貨幣数量説的な見解とも言えますが、銀の取得が以前より少ない費用で行えるという変化を強調すれば、労働価値説とも矛盾するわけではありません。
 2 ハミルトン・ケインズ説。これは全般的な価格上昇に比べて、賃金率の上昇が低かったという点に注目して、この時期に賃金シェアーの低下と利潤シェアーの上昇が見られたことに注目するものです。それは特にイングランドとフランスで顕著だったのに対して、銀の直接の流入国だったスペインでは見られなかった現象でした。当時のフランス重商主義の経済学者は、スペインの高賃金を指摘しています。かくしてこの説は、英仏におけるり利潤シェアーの上昇を資本蓄積にとっての有利な条件と考え、当時のスペインの没落と英仏の台頭を説明しました。
 3 新マルサス主義的な見解。伝統的な社会では農業生産性が停滞的であり、その上昇は人口増加をしたまわっている。特に天候が不順な寒冷化の時期には、凶作のために多くの人々が困窮し、体力が低下するため伝染病が広まりやすい。ヨーロッパでも、まだ17世紀〜18世紀以前には人々はこのような伝統的社会の制約から逃れることができていなかった。この立場は、伝統的な社会に関する新マルサス主義的な見解を代表するものです。

 こうした見解うちどれが真実に近いのか? それはいくら頭の中だけで考えても明らかにはなりません。また気候変動がどのような影響を当時の社会(人々)に与えたのかも、考えるだけではわかりません。

 しかし、気候変動はあったのか、またもしあったとしてどのような要因によって引き起こされたのか、その具体的な姿はいかなるものであったのか、多くの人々が知りたいという気持ちを持っており、またそれを知ることは有益なことと思います。前回私が素人ながらに、半ば「常識」となっているけれども、ほとんどの人にとっては信じ込まされているに過ぎない人為説やそれに対する批判的見解(太陽活動説)をまとめたのは、そのためでもあります。 
 
 ここで少し太陽活動説の補足をしておきます。前回、地球気温の変化を太陽活動に関係づける考え方の一つとして、きわめて高速で宇宙から飛んでくる宇宙線(プラズム)が地球大気に触れたとき、雲が形成されやすくなること、しかし、太陽活動の活発化によって太陽風(プラズマ)が強くなると雲を形成する宇宙線が妨げられるという説があることを述べました。
 その際、もっとも重要な問題はそれが実証されるかどうかにあることは言うまでもありません。しかし、この点については、両陣営の間で繰り広げられている論争から想像されるように、肯定的な研究結果もあれば、否定的な研究結果もあります。

 まず肯定的な見解から。Geograohical Science Letters, 32, 2005 に掲載された W. Soon の論文の相関図です。

これは相関ですが、それを科学的に納得してもらうためには、太陽活動の変化がどのようにして地球気温に影響をあたえているのか、そのメカニズムを解明しなければなりません。その有力な一つが、宇宙線と太陽風との作用に関するものです。
 下図のように宇宙線は大気中で雲の形成上で大きな役割を果たしますが、太陽風がその宇宙線を地球に届かなくするというように要約できるでしょうか。基本的にはそれが実証されたという内容です。



 http://wattsupwiththat.com/2011/05/17/new-study-links-cosmic-rays-to-aerosolscloud-formation-via-solar-magnetic-activity-modulation/

 
 次に太陽活動の否定派=人為説派
 http://wired.jp/2007/07/09/「地球温暖化の原因は太陽の活動」説を否定する/
 宇宙線と太陽風の効果を疑問とする研究成果が提出されたという紹介です。


 最後は、慎重派とでもいうべきでしょうか。国立環境研究所の江守正多氏の文章です。
 http://www.cger.nies.go.jp/climate/person/emori/files/nikkei/ecolomycolumn_4.htm


 科学はドグマではなく、実証研究と論争によって発展します。だから私も科学的な論争には大いに賛成します。大いにやっていただきましょう。
 ただし、それでも私にとっては大きな疑問が残ります。仮に人為説が正しいとします。その場合、1940年以前、あるいはもう少し厳しく言って、19世紀中葉以前の時代における気候変動はどのように説明されるのかが、依然として一つの大きな問題として残ります。
 この場合、それに対する説明法としては、例えば19世紀以前には、大きな地球気温の変化はなかったと考えることも可能でしょう。あるいはもし大きな気温変化があったとしても、それは太陽活動によるものではなく、主に「火山活動」によるものであるという見解もありえます。火山の噴火は、その周囲地域に微細な火山灰や噴煙を長期にわたってまき散らし、それによって地表を日光から遮ります。実際、小氷期は、活発な火山活動が見られた時期に重なっているという研究もあります。
 したがって過去の地球気温の変化は現在の地球温暖化とは無関係であり、現在の地球温暖化は人為的な二酸化炭素の放出によってもたらされていることだけが問題なのだからという仮説もあり得るのかもしれません。しかし、仮説は仮説に過ぎず、実証されない限り、正しい見解・真理だというわけにはまいりません。これは私が本ブログで経済学についても求めている原則です。

 しかし、専門家でもない者が専門外のことについて語り過ぎたかもしれません。次回からは、歴史的な気候変動(そのようなことがあったと前提して)が経済社会にどのような影響を与えた可能性があるのかを、少し詳しく紹介することにします。



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