「トリクルダウン」という言葉がしばしば口頭にのぼります。いや、この言葉自体は実際には使われることは多くないかもしれませんが、その考えは、政治家やエコノミストによって表明されることはよくあります。
トリクルダウンとは、難しい言葉で「均霑」、まず富裕な人々・企業が潤うと、次に何時かは所得の低い庶民にもおこぼれがしたたり落ちてくるというものです。例えばアベノミクスを続ければ、まず企業の業績が回復し、いつの時か(いったい何年後になるのでしょうか?)従業員の給与も上げられる、といった主張・説明・解説の類です。
今回の選挙でも、それを信じて自民党に投票した人たちが多かったのでしょう。
しかし、残念ながら、それが実現したためしはまずありません。
具体例はいつか話すことにしましょう。ここでは、何故か? を説明します。
最も簡単には次のように説明されます。
国民生産は「国民所得」を生みますが、その国民所得は、賃金と利潤に分かれます。記号で書けば、次のようになります。
Y=W+R 国民所得=賃金+利潤
例えば、500の所得が350の賃金と150の利潤に分かれるといったようにです。
500=350+150
ここで、次の年に所得が3パーセント増えたて、515になったとしましょう。
しかし、この時に増えた15の所得が全額利潤(要するに、富裕者の所得)となったしましょう。
つまり、515=350+165 です。
さらに、もし翌年もまた所得が3パーセント増えて、530.45 になったとします。この時、やはり増えたのが利潤(富裕者の所得)とします。
530.45=350+180.45
このことが際限なく続き、国民所得の増加分がすべて利潤になるとしましょう。もちろん、増えるのは利潤だけであり、賃金はいつまでたっても増えません。
さて、この事例は何を意味するでしょうか?
それは、小学生でもわかるように、次の2点です。
1)アベノミクスの効果が現れて、賃金があがるのは2、3年後などという主張が、欺瞞(だまし、言い訳など)以外の何物でもない、ことです。
2)また百年賃金が将来のいつか上がるのを待って無駄だということです。人々が今(今年)賃金を上げられなければ、ずっと上げられません。
この1)と2)は実際に1970年代以降の米国と英国の例からも断言できます。
私たちが賃金(給与、勤労所得)を引き上げることができるのは、労働組合の力や政治の力、世論、市民活動の力などをもって実際に賃金(勤労所得)を引き上げることができるときだけです。
中国の故事に「百年河清を待つ」がありますが、濁った水が流れてくる限り、待っていても河は清くなりません。多くの人がそのことに気づくのはいったい何時のことになるのでしょうか?
実際には、賃金所得が増えないと、国民大衆の所得も増えず、消費需要。消費支出も増えずに、スランプ状態が続きます。
実際、アベノミックスの下で、輸入物価の上昇、消費増税、実質賃金の低下などが生じ、企業はスランプに陥っています。しかも、このスランプ時に企業が利潤を増やすには一つの方法しかありません。賃金を圧縮することだけです。
ともあれ、このことに有権者はまもなく気づくことになるでしょう。
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