2014年12月7日日曜日

アベノミクスを採点する

 投票日が近づいてきました。
 自民党・安倍首相は、「アベノミックス」なるものをさかんに宣伝しています。
 しかし、それが如何にデタラメなものか、その要点を簡単に指摘しておきます。

1)「異次元の金融緩和」、2%のインフレが「デフレ不況」を克服するという主張
  しかし、実際は、
   ・実質賃金の低下
     物価上昇は上昇しましたが、民間大企業でさえ今春のベースアップは、せいぜ    い2千円程度。これは実質賃金が低下したことを示しています。
     おまけに、先日発表されたように、前四半期のGDPは大幅マイナス。
   ・マネタリーベースとマネーサプライ
     「異次元の金融緩和」によって日銀から市中銀行への貨幣供給(マネタリーベ    ース)は、2013年春から現在まで大幅に増加しました。しかし、市中銀行から     人々(個人、企業など)に対する貨幣供給(貨幣ストック)、特に貸付額はほと    んどまったく増えていません。
     当たり前です。企業の設備投資が冷えきったままなのですから。一部のマスコ    ミとアベノミックスを支持するエコノミスト、政治家たちは懸命に投資が増えて    いるという雰囲気を創り出そうとしてますが、事実(数字)は違います。

     *個人的な話しながら、これに関連する話しを一つ。今年の夏、私は、普通預     金にわずかながら一定の金額がたまったので、ある地銀に「定額預金」に換え     るために行きました。金利は限りなくゼロに近い低い率ながら、他の商品に比     べると割高です。
      ところが、銀行の窓口の人は、何とか定額預金ではなく、さかんに年金性の     商品、保険性の金融商品を進めようとします。曰く、「預金は金利が低くてお     客さんに申し訳ない」とのこと。しかし、もちろん、本音は違います。「貸付     が増えていないので、準備預金などの必要はない」、「それより、手っ取り早     く手数料を稼ぎたい」、「行内でも上司にそのように指導されている」といっ     たところでしょうか? 

   ・円安と物価上昇
     物価が上昇したのは、円安(つまりドルをはじめとする外貨高)ため。これに    よって輸入物価が大幅に上昇しました。
     一方、現在では、巨大企業の在外生産が進展していますので、輸出量・額がそ    れほど増えるわけではありません。
     その結果、人々(国民の多く)は物価が上がるのに、所得が増えず、苦しむこ    とになります。
   ・消費増税の長期的影響
     消費税の増税は、1997年の橋本政権による増税時と同じような帰結をもたらし    ています。まず増税前の駆け込み需要の急増、次に増税後の消費需要の急落、そ    してさらにその後の消費需要の長期停滞です。3%の増税効果は、人々の所得が増    えないため、じわじわと効いています。また今後も効いてくるでしょう。
   ・苦し紛れの「トリクルダウン」(均霑効果)説
     こうした状況を前にしてなされる言い訳は、トリクルダウン(均霑)の話しで    す。それは企業・富裕者が業績を改善すれば、次にそのおこぼれが低所得者にも    及ぶというものですが、それが効果をあらわし、労働条件が改善されはじめるの    は、2、3年後という「タイムラグ」理論(?!)を伴ったりします。
     しかし、これほど誤った主張はありません。
     ちょっとでも経済学を学んだことのある人ならば、所得分配から見ると、国民    所得が賃金と利潤の合計であることは、初歩の知識。これまでの歴史(近年の日    本、1970年代以降のアメリカなど)でも、賃金の上昇なしで利潤だけが拡大する    ことは稀なことではありません。
     「百年河清を待つ」という言葉がありますが、じっと待っていれば賃金がいつ    かあがる時が来るというわけではありません。人々が労働側の団結、選挙等にお    ける政治的圧力を始めとする何らかの圧力をかけることができなければ、何時ま    で待っても、だめでしょう。
     そして賃金所得が増えなければ、消費需要も停滞し、したがって(生産能力を    拡大するための)投資需要も衰退して、スランプが続くことになります。
 
2)景気動向指数も軒並み悪化
  内閣府のホームページに載っている景気動向指数を見てみましょう。
  全国勤労者世帯の家計消費支出、耐久消費財出荷指数、製造業の稼働率など、いろん な指数を見ても、景気がよくなったことを示す指数は存在しません。(これらの指数に ついては、後日時間を見て紹介します。)

  そもそも「デフレ不況」と言いますが、本当にデフレだったのでしょうか? 
  もしデフレを物価水準の低下という意味で用いるならば、日本経済はデフレではあり ませんでした。日本の公式統計を信じるならば、物価水準の変動率はほぼゼロでした。 これはインフレでもデフレでもない状態を意味しています。
  しかし、着実に低下してきたものがあります。
  それは日本社会全体の賃金総額(貨幣賃金)の持続的低下です。ピーク時からみれ  ば、10パーセント以上の低下が生じてきました。しかも、それは巨大企業が「内部留  保」を拡大してきたのと並行して進行してきました。
  その背景には、1997年頃から明らかとなってきた生産年齢人口の縮小もありますが、 それと並行して(生産年齢人口が減少しているにもかかわらず!)正規雇用数が減少  し、低賃金非正規雇用が拡大してきたという事実があります。
  ここでも「トリクルダウン」説の欺瞞性が現れています。

 評点 不可

 とりあえず今日はこれまでにしておきます。


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