書きかけの項目がいくつかありますが、もう少しで定期試験が終了し、やっと少し時間が取れるので、その時にいくつかを終わらせることにします。
またジェームス・ガルブレイスの『プレデター国家』の紹介も8月〜9月に予定。
今日は、若干ツイートめいたことを書いて終わりにするつもり。
米国の主流派経済学者(新古典派、サプライサイダー、マネタリスト、新しいケインズ派! など)は、どうしてジョン・メイナード・ケインズをあれほどまでに嫌うのでしょうか?
一つの理由は簡単です。世紀の天才的な経済学者によって根本的に批判され、「ゴミクズ」同様に捨て去られた恨み(ルサンチマン)が今でも残っているからです。
そこで彼らは、ケインズ殺し(「ケインズは死んだ」と唱える)を行なうか、新しいケインズ派を名乗りながらほぼケインズの主張と対立する命題を繰り返し唱えます。
そのいくつかの事例
1)「セイ法則」(供給がそれ自らの需要を創出する)の復活
供給側の経済学が典型。この「理論」では、供給側がすべてですから、需要側の要因を考えることはまったくないという主張につながります。
今日、グローバル競争が激しいから、多国籍企業の留保利潤を増やすために、法人税率を引き下げようとする提案などは、ほぼこれです。
逆に言うと、需要側の要因(C+I+G+XーM)は、輸出を除き、ほぼ考慮外。
輸出について語るときは、貿易収支が全世界ではゼロサムになること、黒字国の対極に赤字国が生まれること、赤字国が債務国であり、累積した巨額の債務が当該国の信用を低下させ通貨危機が生じることなど、を無視する傾向があります。また国内需要(C+I)を無視して、競争力をつけるため賃金を引き下げるべきなどという過激な主張をする人もいます。
2)貨幣数量説(マネタリズム)
貨幣供給は外生的であり(中央銀行が裁量的に決定できる)、中央銀行の供給するマネタリーベースを増やせば、市中銀行が企業等に供給する貨幣ストック(貸付額)も自然に増加するという主張。
さすがに現実の銀行システムを知っている人は、それだけではまずいと考え、「インフレ期待」が生じ消費支出が増えるので、投資も増え、融資額も増え、実際にインフレが生じるなどと「精神論」に頼ったりします。しかし、「期待」は人によってまちまちです。そこで事実によって破綻。
実際には、貨幣供給が増えるのは、銀行から融資を受けたいという企業・家計からの資金需要があるときだけ。しかも、その資金需要も(設備)投資のための需要だけとは限りません。その他に<投機>(speculation)、つまりキャピタル・ゲインを得るための資産購入のための需要も存在します。しかし、なぜかマネタリストは、これを隠したがる。
3)特にかく失業を「高賃金」と「平等な所得分配」のせいにする「理論」
古い新古典派の理論(高賃金が失業を生むという主張)、マネタリズムの主張(自然失業率というものがあり、現実の失業率をそれ以下には引き下げられないという主張+政府が失業を低下させようとしても無駄という主張)、OECDが1994年の公表した「職の研究」の主張(「統一理論」と自称)、市場における技術革新論(現代のコンピュータ化などの技術革新が低熟練者の失業をもたらしたという主張)などなど。
最後の主張など、1980年代初頭の高失業(ITC革新前!)と1990年代のITCの進展(米国の低失業!)に見られるようにまったく時期が食い違っていますが、とにかく嘘も繰り返せば本当になると言ったらよいのでしょうか。
また一時(1990年代〜21世紀初頭)、主流派は米国の低失業vs欧州の高失業という一般化を行い、その上で、欧州の高失業を高賃金と平等主義のせいにし、さらに高賃金と平等主義を欧州の福祉国家や労働保護立法のせいにしました。
しかし、それがまったく事実に反することは、例えばジェームス・ガルブレイス氏が明らかにした通り(翻訳あり)。
・欧州の高失業は、単一通貨(ユーロ)の創出過程と創出後の「緊縮政策」(マーストリヒト条約・安定成長協定)による不景気が原因。
欧州は、このために(連邦政府なしに通貨統合を行なうというケインズに反する事業を行ってきたため)現在でも高失業から脱却できない。
・欧州の各国・地域では、高所得・平等なほうが失業率が低く、低所得・不平等なほうが失業率が高い。これは米国内でも同じ。
実際に主流派の主張の通りに、労働市場を柔軟化し、賃金を引き下げ、格差の拡大を許したら、労働条件が低下するばかりで、失業は減らないでしょう。(むしろ増えるかもしれない。これは ILO が真剣に心配しているところです。)
4)その他
今日はこれくらいにしておきます。(この項、続く)
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