2017年7月13日木曜日

安倍氏の経済政策の経済的帰結 7 「ケインズ政策」の効果?

 安倍氏は俗にいう「ケインズ政策」を実施したのか、もしそうだとしたら、その結果どうなたのか? これが前回のブログで、私の提起しておいた問題である。
 しかし、結果については、一部は既に示してある。実質GDPについて言えば、それは安倍政権成立前のパフォーマンスを大幅にしたまわっている。要するに低成長である。
 この本質的な原因・要因が何かは、あとで詳しく検討しなければならないが、とりあえず言えることは、アベ財政政策がなにかしらの成長率の上昇をもたらしたということはない、ということだろう。
 だが、論より証拠、実際の統計を見ておこう。下図は、財務省のホームページから得たものである。
 
http://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/condition/003.htm

 この図からすぐにわかることは、アベ政権がいわゆる「ケインズ政策」を実施した形跡はうかがえない。何故か?
 第一に、一般会計の歳出額は、増えていない、どころかむしろ減少ぎみである。
 第二に、一般会計税収は、増加している。この増加が何によるものかは、既に示したが、繰り返すと、消費増税によるものと、それ以外の(安倍首相にとっての)幸運によるものである。決してアベ政権の自慢できるような手柄ではない。もっとも、人の成果をあたかも自分の成果であるように自慢するのが、安倍氏の性格である。これも既に述べたところである。
 要するに、平成24年を起点に見ても、単年度の財政赤字の増加を通して「ケインズ政策」を行った形跡は一般会計の収支からは認められない。むしろ全体として見ると、消費増税の手段を用いた緊縮政策(austerity)が基調となっている。この緊縮に一役買っているのが、あろうことか(すでに指摘した)法人税の減税である。
 もちろん、単年度の赤字がなくなったわけではなく、依然として大幅な財政赤字は続いている。またその結果、公債発行額も巨額(40兆円弱)にとどまっており、政府の粗債務残高は増加しつづけている。
 したがって、日銀が市中銀行から巨額の国債を購入することは、国債の保有者を転換する効果(市中銀行→日銀)を持つことは確実であり、事実、現在日銀は国債の最大の保有者となっている。
 
 もっとも特別会計を含めてみると、アベ政権成立後も年金などの社会保障関係支出は少し増加しており、また(注意せよ!)国債費(利子・償還)も増加しているが、特段に「ケインズ政策」と呼ぶほどのものではない。念のために、下段に一般会計・特別会計の歳出合計額を示しておこう。(この中には、国債費、つまり償還額および利子支払いが含まれていることに注意。)
 
財務省のホームページ「一般会計・特別会計歳出の推移」より。

 もう一つGDP成長率に対する寄与率の指標も示しておこう。
 利用できる国民経済計算統計は、2016年(暦年)までのものであるが、少なくともアベ政権が誕生して2年たっても、政府支出(消費、固定資本形成=投資)の寄与度が上昇しているとはとても言えない。
 

 この図は、まずアベ政権成立前の時期について、リーマンショック後しばらくして輸出が回復するとともに、純輸出の寄与度が上昇したこと、公的固定資本形成のパーセントが2010年、2012年、2013年とかなり高かったことを示している。しかし、アベ政権時代には公的資本形成の寄与度はマイナスとなっており、政府最終消費支出も増えてはいない。
 
 以上がアベ政権の「ケインズ政策」なるものに関する統計的検証である。ただし、誤解をさけるために、一言だけ述べさせてもらうと、私は決して緊縮論者ではない。しかし、同時に野放図な財政支出拡大論者ではない。金融と同じく財政にもそれそうおうの節度が求められる。財政崩壊がきわめて恐ろしい事態であることは、ギリシャの例も示すところである。だが、このことについては、また後で説明する機会があるだろう。

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