2013年12月4日水曜日

恥ずかしい水準の日本の最低賃金 その1

 ずばり、日本の最低賃金は、いわゆる先進国の中でも恥ずかしいほど低い水準にあることをご存知でしょうか? とても「先進国」と自称できるような水準ではありません。
 生活保護の水準もかなり低く、しかもそれを受けるときに人間としての尊厳を失わなければならないほどの取り扱いを受けることが問題になっています。昨年、国連から日本政府が注意を受けたほどですが、日本政府は真面目に対応しようとはしていません。むしろ、生活保護費を引き下げたほどです。本当は、最低賃金のほうを引き上げなければならないのに、です。

 いわゆる先進国の間では、米国の最低賃金(連邦)の水準がかなり低いことで知られていますが、日本の水準はそれとほぼ同じになっています。
 米国では、1970年代に最低賃金は相応の額に引き上げられていました。ところが、レーガン、ブッシュのネオリベラル政策の時代にほとんど据え置かれたままになりました。当時からインフレーションが進行しているのに、です。当然、最低賃金(貨幣額)は同じでも、インフレによって実質的な最低賃金は下がります。日本の最低賃金は、その下がってきた米国の最低賃金と同じレベルなのですから、唖然とします。
 もう一つ、ヨーロッパではイギリスでもサッチャー首相の下で最低賃金制度が事実上廃止されました。しかし、トニー・ブレアーの労働党政権の下でともかく最低賃金制度は再建されます。しかも、1997年の法律で復活されたのち、イギリスの最低賃金水準は、それ相応の水準に設定されました。それはまた少しずつ引き上げられています。
 ちなみに、イギリスで最低賃金制度が復活する前に、それが職=雇用を失わせ、失業者が増えるという反対運動がありました。しかし、最低賃金制度の復活後に失業率が上昇したという話はついぞ聴きません。確かに、2006年以降、失業率が上昇しましたが、それは最低賃金の引き上げのせいではなく、資産バブル崩壊による金融危機・不況のためです。
 最低賃金の引き上げに反対する人が金融資本主義・マネーゲームに反対しないのは、奇妙な論理・行動というべきではないでしょうか?

 フランスでは、1965年の法律によって最低賃金を平均的な(中位の)賃金率に近づける努力が払われてきました。その水準はかなり高く、中位の賃金率の60パーセントを超えています。(ちなみに、最低賃金制度に反対の日本のある労働経済学者が子弟をフランスに留学させており、「フランスはいい国だ」と言っているという逸話は有名です。彼の理論では、高い最低賃金のためにフランスは、ダメになっているはずですが、・・・。)
 
 ドイツでは、歴史的な事情(強い労働組合など)があり、最低賃金制をしいていない例外的な国でしたが、労働組合・ドイツ社会民主党が最低賃金制の制定の方向に動き、それに保守党(キリスト教民主同盟など)が賛成しています。ドイツも日本を超える水準の最低賃金を法定する国になります。

 さて、日本の最低賃金はどれほどの水準にあるのでしょうか? 次に若干の統計データを見ておきましょう。(続く) 

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