2013年12月16日月曜日

マルクス問題、ケインズ問題、ポランニー問題

 前に、市場を廃止することが難しいことを述べましたが、今度は市場が完璧な制度ではなく、欠陥・問題を持つことを指摘しなければなりません。

 それは「マルクス問題」、「ケインズ問題」、「ポランニー問題」の3つの形に整理することができるでしょう。(ロバート・ポーリン『失墜するアメリカ経済』参照。)
 最初にそれぞれについて定義的に言及しておきます。

1 マルクス問題
 現代の資本主義経済(企業家経済)では、資本機能を担う人々(経営者、株主=所有者)と労働者(従業員)との間には大きな力の差があり、労働者は圧倒的に弱い立場にある。その結果、利潤(R)が増加し、賃金(W)は利潤に比べて圧縮される傾向を持つ。
  Y=W+R    所得分配
 とりわけ失業率が高いとき、労働者の交渉力は著しく低下し、賃金シェアーの圧縮傾向や労働条件の悪化が生み出される。また所得格差も広がる。
 労働者の交渉力を強め、社会を安定化させるためには、労働保護立法が必要となる。

2 ケインズ問題
   Y=C+I       総需要(有効需要)
   S=I                     貯蓄と投資の事後的な恒等式
 現代の経済では、雇用量は生産規模に依存し、生産規模は有効需要によって決定される。ところが、人々の貯蓄性向(流動性選好、貨幣愛)が投資誘因よりも強いため、総需要が抑制される傾向がある。また人々は社会不安を感じたとき、貯蓄性向を一層強め、消費支出を削減するが、それは企業家の期待利潤率を低め、投資誘因をいっそう弱くする。
 また金融自由化は資産バブルを生み、その後に金融危機をもたらす。その結果は、社会不安の増幅、不況、失業の拡大である。
 一言でいえば、総需要の縮小が不況・景気後退をもたらす。
 総需要を縮小させないためには、消費性向を高め、消費支出を減らさないことが必要であり、社会を安定化させる制度が求められる。

3 ポランニー問題
 伝統的な社会では、市場は存在していたが、それは「社会構造」の中に埋め込まれていた。どんな社会でも、安定化のためには、そのような市場の社会構造の中への埋め込み(コモンズ、公共財)が必要である。しかし、19世紀の産業革命以降、人類は「市場」を社会構造から解放し、自由市場(自由放任主義)を生み出した。そして、それが社会の不安定化をもたらした。→「マルクス問題」と「ケインズ問題」の発現
 1929年以降の金融恐慌、大不況、失業の発生はそのためである。そして、それはナチズムをもたらした。また戦後の社会民主主義体制=福祉国家、混合経済をもたらした。
 しかし、人類は、その教訓を忘れ、近年ふたたび(新)自由主義に走っている。そして、ふたたび金融危機、不況、失業に悩まされ、政治的な混乱がもたらされている。

 *マルクス、ケインズ、ポランニーという偉大な経済学者が明らかにした問題という意味であり、決してこれらの経済学者が問題児だったというわけではない。念のため。



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