2013年3月26日火曜日

景気と賃金・給与への補足 効率賃金仮説

 前回のブログに補足します。
 社会全体で賃金・給与を引き上げると、所得が増え、その結果、総支出=総需要が増えて景気がよくなる(あるいは逆は逆)という説明をすると、次のような質問を受けることがあります。もちろん、それはまっとうな質問です。

 質問)貨幣賃金が増え、需要が増えるということですが、もし企業がそれに応じて労働時間を増やす(あるいは雇用される人を増やす)のであれば、貨幣賃金率は一定ですね? またもし労働時間が一定という条件の下で貨幣賃金が増える(つまり労働時間あたりの賃金率が上昇する)という意味ならば、労働者一人あたりの生産性(労働生産性)が上昇しなければならなくなりますね? それは労働密度の強化を意味しませんか?

 その通りです。社会全体での貨幣賃金の上昇は、総需要の増加を通じて、A)労働時間(または雇用)を増やすか、B)賃金率および労働生産性の上昇のいずれかを通じて、経済的調整をもたらすことになります。
 逆に言うと、社会全体での貨幣賃金率の低下は、総需要の低下を通じて、A)労働時間(または雇用)を減らすか、B)賃金率および労働生産性の低下のいずれかの結果をもたらします。これは近年の日本で実際に生じた出来事です。具体的に言えば、例えばサービス業では、店員は店にいてもお客さんが来ないので、無為に労働時間を過ごし、結果的に労働生産性が低下するということが生じました。もうこれ以上雇い続けることができないという時点に至れば、解雇が行なわれます。
 貨幣賃金の引き上げは、それを逆転させ、労働生産性を引き上げ、それでも従業員が対応できなければ、経営者に雇用を拡大するという選択を行なわせるでしょう。

 もちろん、産業や企業によって事情が異なることは確かです。しかし、もう一度言いますが、内部留保を貯めている企業は、それだけの需要があって儲けることができたということを意味します。少なくとも、そうした企業は賃金の引き上げを行なう余裕があり、またそうした責務を負っています。

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