2015年9月26日土曜日

怪しげな新アベノミクス GDP600兆円のデタラメ


 新アベノミクスと称し、また怪しげなことが言われています。その一つ2020年までにGDPを600兆円にという話しがありますが、緊急に、この点をちょっと見ておきましょう。

 これを実現するためには、今年のGDPを500兆円とすると、毎年3.7パーセントのペースで経済(GDPの規模)が成長しなければなりません。これは経済全体の話しです。しかし、ラフに言って、生産年齢人口は毎年1パーセントずつ減少するので、経済全体を毎年3.7パーセント成長させるには、一人あたり4.7パーセントの経済成長が必要となります。もうこれだけで、新アベノミクスのデタラメさは明らかです。
 が、ひょっとすると、これは実質GDPではなく、名目GDPの話しだというかもしれません。つまり、物価が毎年2パーセントずつ上昇すれば、実現可能ではないかというわけです。ということは、実質では毎年経済全体で1.7パーセント、一人あたり2.7パーセントの経済成長が見込まれるということになります。この場合には、実質GDPは2020年に544兆円となります。
 しかし、これもほとんど実現不能、選挙目当ての単なる宣伝、デマの類であることは明白です。何故でしょうか?
 経済が成長するためには、まず何よりも有効需要が増えなければなりません。どんなに生産しても購入する人がいなければ、在庫が増え、結局、生産は頓挫するからです。(これは経済学部の学生なら誰でも知っている基礎知識です。)
 そこで、いま一つのシナリオ、つまり労働者の所得が経済全体と同じペースで増加するというシナリオ(人々が新アベノミクスに期待するであろうシナリオ、また安倍晋三が人々にそう思わせようといているであろうシナリオ)を考えてみます。
 仮にある年齢(例えば40歳)の人々の平均年収が現在500万円だとしましょう。その2.7パーセントは13万5千円ほどになります。月あたりでは1万1千円以上の上昇です。つまり、1997年から減少しつづけた平均賃金が今度は急激に上昇することになります。しかし、よく考えてみてください。日本の企業が急に気前よく月給を毎年一万円以上も上げ続けるでしょうか? アベノミクスが喧伝された昨年からでも物価が2パーセント近く上昇したため、平均給与500万円層にとっては年収10万は上がらないと実質的低下を意味したにもかかわらず、巨大企業でもわずかな昇給が実現されただけです。物価上昇の下での実質賃金の低下、これが客観的な結果でした。このような状況の中で、企業が急に給料を上げ始めるという根拠はどこにあるのでしょうか? 
 もちろんまったくありません。要するに新アベノミクスは、次の選挙をめあてにしたデマに過ぎないことは明白です。

 しかし、忘れていました。理論上は、もう一つのシナリオがありえます。つまり、巨大企業が労働者の実質賃金を上げず(また下請け企業の単価を上げず)、ひたすら利潤を増やそうとするというものです。もしこれが実際に実現されれば、巨大企業の経営者報酬は増え、また巨大株主に対する配当も増加するでしょう。つまり99パーセントの犠牲で、1パーセントの所得と富が増加するという帰結です。またこの場合には、企業の内部留保が著しく増加するでしょう。しかも、世界一企業が活動しやすい国(法人税の低い国)では税引後の利潤と企業の内部留保はさらに大きくなります。しかし、その結果、国内投資が増加すると期待してはなりません。むしろ大衆の所得が抑制され、消費が抑制されるのですから、生産能力を拡大するための国内設備投資は行なわれず(現在と同様です!)、そのため企業はますます投資機会を求めて外国に進出するでしょう(空洞化の進行)。

 私は決して想像上のシナリオを語っているのではありません。実は、これこそが小泉構造改革、それに安倍政権をはじめとする自民党政権の下でずっと行なわれてきたことです。
 この構造を安倍政権はどのように変えるというのでしょうか? もし変えることができるとしたら、それは労働側に「対抗力」を与え、団体交渉における賃金引き上げ要求権を強めることによるしかありません。しかし、経団連にべったりの安倍政権がそのようなことを実現する意図も力もないことは言うまでもありません。要するに、新アベノミクスもまた挫折した旧アベノミクスと同様に、単なるデマゴギーです。
 それは違憲の戦争法案を強行した政権が次の選挙で敗北を避けるための作戦に他なりません。大手マスコミがまた持ち上げるかもしれません。注意しましょう。
(この項目は、後日、もう少し詳しく紹介する予定です。)

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