2017年6月21日水曜日

安倍氏の経済政策の経済的帰結 1

 安倍首相の経済政策、俗に「アベノミクス」と呼ばれているような経済政策がいかなるものであり、どのような経済的帰結をもたらしたかについては、このブログでもすでに難解も言及しており、また言うまでもなく、巷の書店には、それについて書かれた様々な本が並べられている。
 その上に何も語る必要はないのではないかと考える人もいるかもしれないが、以下では何度かにわたって、いくつかのことを記してみたい。

 いうまでもなく、その「3本の矢」のうち、最も力を込めて積極的に宣伝されたのが「異次元の金融緩和」であった。この金融緩和がそれ自体としては、経済成長をもたらす上で何らの力も持たないことは、すでに何度も触れているが、ここでもまずその点を確認しておきたい。1930年代の大不況に際して米国の連邦準備制度理事会もこの金融緩和策を試みたが、失敗に終わったことは、必ずしもよく知られている事実とは言えないかもしれないが、少なくとも専門家の間では周知の事柄である。そのような事例は、19世紀末の金融崩壊後の日本、21世紀初頭の金融崩壊後の欧米諸国でも事欠かない。一方、好調な経済をタイトな金融政策によって(簡単に言えば高金利政策によって)くじくことはいとも簡単である。その具体例は、1980年代に米国のRBのヴォルカー議長の下で実験された高金利政策(レーガノミクスの本質的な一部)である。このとき、米国は不調のどん底に落ち込み、そこでそれまで14パーセントに達していたインフレ率はスローダウンしたが、失業率は10パーセントを超える水準にまではねあがった。
 要するに金融政策には、「非対称性」と呼ばれる性質があり、経済を悪化させることは(その気になりさえすれば、という条件つきで)簡単だが、悪化した経済を好転させることは容易ではない。場合によっては不可能である。

 そもそも、およそ経済成長を促進するための経済政策(仮にそれが正しいと前提して)を立案する者、またはそのような経済政策を調査・研究する者にとっては、何故、どのようにして従来の経済が不調または不況、停滞などの状態に陥ったのか、その理由や事情を明らかにし、それに対応することが求められる。
 しかし、アベノミクスにはそうしたことは一切ない。安倍氏にその能力がないことは明らかであるように見えるが、そもそもそうした意図もないのであろう。彼が狙っていたのは、経済自体というよりもむしろ政治・国際関係における「第4の矢」という毒矢であったと考えられるからである。実際、安倍氏が政権についてから実施してきた政治的な毒矢は列挙にいとまないほどである。念のため、いくつかあげておこう。

 1)TPP
  選挙前には反対、嘘をつかないといいながら、選挙が終わると、積極的に推進
 2)特定機密法
 安保法制(違憲のいわゆる「戦争法」であり、これにより自衛隊は米軍などと共同して外国と戦争することが可能になった。また「集団的自衛権」にもとづき軍事同盟に加わることも可能となってしまった。安倍氏は中国等を仮想敵としており、諸外国に対する先制攻撃も否定していない。)
  3)原発の再稼働・輸出政策
      危険きわまりなく、高費用を国民・外国人に押しつける政策の持続  
 4)共謀罪(何をしたら罪になり、罰せられるか不明。罪刑法定主義に反する)
 カジノ法(平安時代以降、禁止されてきた賭博を公認)
 5)安倍友学園問題(森友学園、加計学園、他)
  国家戦略特区という利権、その私物化 
  政府による文書隠蔽
  処罰をちらつかせる文科省
  警察による国策捜査の始動
  告発した人に対する人格攻撃
    警察を使った内偵も行っていたことが判明
 6)五輪利権、地元下関利権など
 7)国会審議のひどさ
  頻発する問題発言、答弁不能・迷言
 8)教育勅語の復活策動
  「自由と権利」の蹂躙と軍事をねらいとした義務の押しつけ
  国民を天皇の「臣民」(subjects)とする復古政策
 9)総じて政治の私物化
  この経済的意味については、後の説明する予定  

 まだ他にもあるが、連日のように出てくる様々な問題は、もはやこの内閣が尋常な存在ではないことを示している。

 アベノミクスとは、こうした「毒矢」を放つために、まずは有権者の関心と票を買うための宣伝であったことを、まず確認しておきたい。
 その上で、安倍氏の経済政策のもう少し詳しい検討に移ろう。
 その際の最大の論点は、新自由主義(ネオリベラル)政策の問題であう。

(続く)
 

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