2015年6月19日金曜日

ユーロ圏における高失業を生み出したゼロ思考/単一思考 (1)

 EU総選挙で、特にユーロ圏の有権者がEUと通貨統合に拒否反応を示したことは、理由なくして生じたことではない。またルペンの率いるフランスの国民戦線(極右政党)などが票を伸ばしたことも偶然ではない(私自身は決して支持しているわけではない。念のため)。フランス社会党までが、これから説明する・国民大衆にとって好ましくない政策にのめり込んでしまったときに、それに反対する人々が取りうる選択肢は限られているからである。ちょうど1932年のドイツの総選挙で(失業政策を放棄した昼ファーディング率いる)SPDに多くの労働者が幻滅したようにである。

 ヨーロッパでは、ユーロという単一通貨を創出することは、バンコールという世界貨幣を創出するという戦後通貨体制に関するケインズ案の精神にそうものだと主張する人々がいある。しかし、それはまったく誤りである。

 そもそもケインズ案は、各国政府が「完全雇用」をめざして、それぞれの国内で完全雇用の達成に必要な有効需要を創出することをめざすために考え出されたものであり、したがって次のことを求めていた。
 1)新重商主義の放棄
 自国内の不況・高失業を輸出(外需)の拡大によって解決しようとする政策、つまり「近隣窮乏化政策」または新重商主義をやめること。
 2)国際収支の均衡の達成
 そのために、特定の国が貿易収支の黒字をターゲットにしたり、その対極に赤字国を生み出すことを許さない。
 3)バンコールと準固定相場制、国際清算同盟、黒字国のペナルティー
 そのためにバンコールという世界貨幣を創出する。しかし、これは(ユーロと異なり)国際的決済のための通貨であり、各国は自国通貨とバンコールを適正な平価でリンクさせる。国際的な清算を行う機関として清算同盟を設置する。また国際収支の不均衡が生じた場合、赤字国は最終的に通貨の切り下げを行うことが期待されるが(つまり準固定相場制)、黒字国もペナルティを課せられる。すなわち、黒字国は、黒字額の相当額を途上国の開発援助に向けなければならない。また国内需要を拡大するための方策(貨幣賃金率の引き上げなど)を実施する義務を負う、などである。

 残念ながら、ユーロの導入のためにEU諸国が採用した方策は、ほとんどすべて(!)、こうした精神に反している。
 1)ドイツによる新重商主義的政策志向
 もちろん、すべての国が新重商主義政策を取りえたわけではないが、これについては、後に説明する。
 2)ユーロという為替調整不能な単一通貨の創出
 ケインズのバンコールと異なり、ユーロは為替調整を不可能とした。しかも、ヨーロッパにはドイツのようなインフレ率の低い中心国もあれば、ギリシャやスペイン、ポルトガルのようなインフレ率の高い周辺国もあるという状態の中においてである。
 3)完全雇用政策の放棄、むしろ失業を創出する政策
 しかも、ケインズ案の精神にあった「完全雇用」は完全に放棄されてしまった。多くの国(特に中心国)は為替相場を固定化するために、緊縮的な財政政策と非常に引締的な金融政策を強要された。言うまでもなく、1993年に批准された「マーストリヒト条約」とその後に批准された「安定成長協定」(SGP)によってである。
 さらに注意しなければならないのは、このような経済政策の中で賃金が強く抑制されたことである。
 ユーロ圏の人々がそれでもそれに耐えたのは、エルドラド(黄金郷)が約束されていたからに他ならない。それはエマニュエル・トッド氏が言うように「ゼロ思考」または「単一思考」としかいえない代物である。しかも、この約束は果たされなかった。また今後も果たされるようには思われない。何故だろうか?
 さらに詳しく見ていこう。

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