2013年10月11日金曜日

トンデモ経済学 その4 ケインジアンよ、お前もか!?

 しかし、おかしいのはマネタリストのフリードマンだけではありません。
 自然失業率の思想は、なんとアメリカ・ケインジアン(新古典派総合、ニュー・ケインジアン)によって受容されました。そもそもケインズから見れば、彼らの経済学の90%はケインズ経済学とは似て非なる非現実的な想定の上に立つ新古典派の経済学(市場均衡経済学)に他なりませんでしたが、それでもこれは驚きです。
 
4 新古典派・マネタリストの「自然失業率」の思想は、アメリカ・ケインジアンによって「インフレーションを加速しない失業率」(NAIRU)の思想にまで「進化」を遂げます。
 NAIRU は、Non-Acceralationing Inflation Rate of Unemployment の省略形です。この思想は、読んで字の如し、です。それはフリードマンの思想を受け継いでいます。つまり、低失業のもとでは労働者の交渉力が強くなり、必ず貨幣賃金率が大幅に引き上げられ、物価上昇をもたらすだけでなく、インフレを加速するから(理由)、インフレの加速を避けるためには、一定以上の失業率はやむを得ない、または一定以上の失業率を実現するべきである(!!)という「思想」です。
 この思想は思想(信念、教義)であり、現実に正しいという保証はありません。またそれを政治家などが正直に人々(国民)に告白すれば、選挙で票を失うので、密かに流通させているのが現実です。
 しかし、それが広く流通していることは、例えば OECD などの統計(i-Libraryなど)に載せられていることからも明らかです。
 しかし、それがデタラメなことは、ちょっと考えれば、すぐに分かります。例えば1970年代以降、米国の労働者の平均的な労働生産性は2倍以上に上昇しました。したがって、最初に述べたように、実質賃金率が2倍に増えてもおかしくはありません。ところが、R・ポーリン氏などが明らかにしたように、米国の労働者の平均実質賃金率は最近40年間に7%も低下しているのです。ここからみても賃金は断じてインフレの原因ではないことは明らかです。
 しかし、OECDの NAIRU 統計は、依然としてかなり高い数値を示しています。しかも、現実の失業率より高いことも低いこともあります。しかも、どんな理由からか不明ですが、上下に変動しています。一体どのように計算しているのでしょうか? 知ろうとしても、その計算方法は公表されていません。 
 もちろん、真の経済社会の実相を知っている人は、そんな数値が空想的産物であることを知っていて、そんな統計など見向きもしないでしょう。私のように批判する目的がある場合は別ですが、・・・。

 私は、多くの人に、多くの国の政府がかなり前から「完全雇用」政策を放棄し、それどころか高い失業率が好ましいという思想に捉えられていることをきちんと知って欲しいと思っています。
 (続く)

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