2012年12月26日水曜日

小泉「構造改革」と不良債権

 「転機となった1997年」の説明でも書きましたが、2001年初頭から翌年の初頭にかけて全国銀行の不良債権が急速に拡大しましたが、その後2002年の途中から減りはじめ、2006年頃までにはかなり低い水準にまで低下しました。日本政府は2005年度をもって不良債権の処理が最終的に終了したと宣言します。
 このような動きは、どのように説明されるでしょうか?
 まず2001年度中の不良債権の急増から見ましょう。周知のように、不良債権は「リスク管理債権」と「金融再生法開示債権」との2つの方法によって示すことができ、金融庁の統計でも2つの方法によって示されています。この統計によれば、不良債権はリスク管理債権の中では主に「延滞債権」と「貸出条件緩和債権」の増加によるものであり、「破綻先債権」は減少しています。また金融再生法開示債権の中では主に「要管理債権」の増加によるものであり、「危険債権」と「破産更正債権およびこれに準ずる債権」を合わせたものは減少しています。
 破綻先債権や破産更正債権が減少した理由は、はっきりしています。実は、それよりましな不良債権(延滞債権や貸出条件緩和債権など)から破綻先債権に「下方遷移」してくる債権や「業況悪化」によって正常債権から破綻先債権になる債権が次々に生まれていたのですが、一方では不良債権の早期処理の方針にもとづいて巨額の破綻先債権の「オフバランス化」が行なわれていたからです。
 オフバランス化というのは、不良債権の直接償却といわれる方法であり、銀行の貸借対象表(資産と負債の双方)から取り除くというものです。例えばX銀行がA社に貸し付けていた資金10億円が不良債権化したとしましょう。X銀行は、オフバランス化によって、A社に対する債権(10億円)の全額または一部を放棄し、自己資本をその金額だけ減らすことになります。
 この直接償却には3つの方法があります。
 1)銀行が債権を放棄する私的整理
 銀行と企業の話あいにより、銀行が一部の債権を放棄するが、企業の再建を促し、残りの債権を回収するという方法です。
 2)会社更生法や民事再生法などを適用する法的整理
 会社更生法や民事再生法、破産法などによって裁判所を通じて不良債権を処理する方法であり、会社更生法や民事再生法の場合、企業は再建に向けて事業を続けますが、破産法の場合には企業活動は停止されます。
 3)債権売却のパターン
 不良債権の一部を第三者に売却する方法であり、売却相手としては産業再生機構や整理回収機構(RCC)などがあります。
 これによって銀行の不良債権処理は最終的に終了しますが、企業が銀行から融資を受けられなくなるため倒産に至ることもあります。(続く)

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