2013年10月2日水曜日

世界経済史Ⅱ 第1回

 今日の講義の要点

1 履修上の注意(略)
2 年代・時期区分
   第一次世界大戦(1914〜1919年)
   両大戦間期(1919〜1939年)
   第二次世界大戦(1939〜1945年)
   戦後
    戦後復興期(1945〜1950年代前半)
    資本主義の黄金時代(1950年代中葉〜1973年)
    黄金時代の黄昏(1973〜1979年)
    変調=ネオリベラル政策の台頭(1979年〜 )
3 講義の焦点
   ・「所得分配と雇用」を中心的主題として、それに関係する事柄を説明する。
   ・コンドラチェフ=シュンペーターの長期波動説は採用しない。
   ・しかし、ある傾向が一定期間にわたって持続することがある。
    その歴史的事情・要因を検討する。
   ・両大戦間期=「危機の20年間」
     ドイツに対する賠償金問題、超インフレ、ナチズム
     1929年の金融危機
     1930年代の世界恐慌
     SPDの対応、ナチスによる政権掌握と軍備拡張政策
   ・第二次世界大戦 戦時体制の経済社会への影響
   ・戦後の復興 国際経済秩序、国内経済秩序の形成
     混合経済、福祉国家、フォーディズム、完全雇用の政策目標
   ・黄金時代・黄昏・ネオリベラル政策
4 若干の理論ツール
   ポスト・ケインズ派、レギュラシオン理論、SSA、制度派の理論の有効性
   ・Y=W+R         所得分配
   ・Y=C+I+G+(XーM)  有効需要
   ・Y*=σK           生産能力(E・ドーマー)
   ・U=Y/Y*         稼働率(生産能力の利用率)
   ・N=Y/ρ         雇用(労働需要、単純化した現実的モデル)
   ・規模に関する収穫逓増   
   ・合成の誤謬(ミクロとマクロの接点)

 雇用(労働需要)
  新古典派の労働市場論は、マーシャリアン・クロス(右下がりの労働需要、右上がりの労働供給)を理論的に前提している。しかし、この二つの公準は、ケインズ(『一般理論』、1936年)、ダグラス大佐(『賃金理論』1936年)、スラッファ、ドッブ(『賃金論』)、ロビンソン(『ケインズ雇用理論』)などによって批判されつくしており、成立しない。
 これに代わるケインズ=ロビンソン型の雇用理論は、若干簡素化すると、N=Y/ρ で示される。すなわち、労働需要(雇用量)は、生産量(額)に比例し、労働生産性に反比例する。例えば1000単位の製品を生産する場合、一人の労働者が1日に標準的に10単位を生産することができるならば(労働生産性=10単位/人・日)、100人の労働力が必要になる。(現実には、一部分、必要労働力の非比例的部分がある。)
 ところで、生産量は、有効需要によって決まる。また労働生産性は、様々な要因(教育、技能・熟練、労働手段の性質など)によって決まるが、最も簡単なモデルでは、ドーマーが明らかにしたように、労働者一人あたりの標準的な固定資本ストック(K/L)に比例する。したがって労働力の要因を捨象すると、純投資(粗投資マイナス減価償却費)が行われている限り、労働生産性(ρ)は上昇すると考えることができる。通常の経済では、例えば景気後退のときでも純投資が行われている限り、労働生産性は上昇するので、生産額が減少しなくても、雇用量(労働需要)は低下することになる。
 これは、新古典派の労働市場論に代わり、現実をよく説明する理論である。この理論によれば、物価一定の下で、実質賃金率を引き下げるために貨幣賃金を多くの企業が引き下げると、社会全体の貨幣所得が減少し、総消費需要が低下するという結果が導かれるため、企業も投資を縮小し、総需要=総生産が縮小し、その結果、雇用はむしろ縮小する(もちろん失業者は増加する)ことになる。
 

0 件のコメント:

コメントを投稿