何でも安倍首相は2%のインフレーションを目指すそうです。その政策的根拠は、どこにあるのでしょうか? 答えは「現在までデフレ不況が続いたから」だからそうです。
ということは、デフレ(インフレ)が原因で不況(好況)が結果だから、政府と日銀が政策的にインフレーションを起こせば、それが原動力となって好況という結果がもたらされるという趣旨でしょうか? 寡聞にして、はっきりとそう聞いたわけではありませんが、どうもそのようです。要するに、安倍首相は、①政府および日銀が頑張れば(米国のバーナンキFRB議長のように国民に「インフレ期待」=やる気を示せば)、インフレーションが生じ、②それにつれて景気もよくなるという論理(理論?)を持っているようです。
しかし、本当にそのような政策学的な論理(政策目標ー結果)が経済学によって根拠づけられるのでしょうか? 確かにそのように言う経済学者(いわゆるリフレ派など)はいます。しかし、残念ながら、そのような理論は成立しません。論より証拠。まず過去の事実を日本の統計から見ておきましょう。
下図は、1970〜2011年の40年間における日本の消費者物価上昇率(CPI)とGDP成長率の組み合わせをプロットしたものです。この図から物価上昇率が2%ほどの時の成長率がどれほどだったかを見ると、マイナス1%ほどからプラス5%ほどのところに分布しています。しかし、必ず2〜3パーセント以上の成長率というわけではありません。2パーセントというのは最近のデフレの時にも見られた成長率ですから、(安倍首相にとっては)むしろ克服されるべき低成長率というべきでしょう。それにちょっと見れば分かるように、物価上昇率が1パーセント以下だったりマイナス(デフレ)の時にもGDPが4パーセント以上の時もあります。
仮に両者の間にわずかながら有意の相関関係があるとしても、明白な相関関係があるわけでは決してありません。しかし、もしはっきりした関係がないならば、大変な事態となることも想定できます。もしインフレーションだけ進行して、GDPが成長しなかったらどうなるのでしょうか? それは多くの人々に相当なショックを与えることになります。下図をもう一度みてください。もしそんなことにはならないと言う人がいたら、その人は一体どのような論理にもとづいてそう断言できるのでしょうか?
次回はこれについて詳しく説明します。
GDP成長率と消費者物価指数(図は内閣府のデータより筆者作成。)
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