2017年7月9日日曜日

安倍晋三氏と金正恩氏の奇妙な「共同」関係

 アベ政治が危機に陥っている。
 しかし、アベ内閣には、外に有力な味方がいる。
 北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の金正恩(キム・ジョンウン)氏である。
 もちろん、安倍氏と金氏が個人的に仲の良い関係にあるというわけでは決してない。金氏は、森友や加計のような、いわゆる「安倍友」ではない。
 客観的に国際政治の観点から見れば、金氏のねらいはあくまで米国であり、なんとかして米国から国際的な存立承認を得たいということであろう。1950年に勃発した朝鮮戦争は、1953年7月の休戦協定によって事実上終了した。その後、朝鮮半島の両国間には中立を宣言したスイス、スウェーデン、チェコスロバキア(当時)、ポーランドの4カ国によって中立国停戦監視委員会が置かれ、中国軍も1958年に完全撤収した。
 しかし、今日にいたるまで平和(講和)条約は結ばれていない。しかも、韓国には日本と同様に米軍が駐留しており、米国は「集団的安全保障」を盾に、外国軍との軍事同盟を結んでいるだけではなく、敵国に対する「先制攻撃」も否定していない。一方、このような中で、かつの中国は北朝鮮にとって頼みの綱であったが、1980年代の改革開放政策の中で関係は著しく変化してしまった。
 たしかに、一時きわめて高まった米・北朝鮮間の緊張も、米中会談によってトランプが中国の北朝鮮に対する圧力政策によって解決することを探った時点で、若干和らいでいる。しかし、中国の北朝鮮に対する接近にも限界があることがかなりはっきりしてきている。
 中国自体もアベ政権にとっては、潜在的な敵国として日本の有権者を煽る対象とされてきた。もっとも、さすがに日本が中国を相手に戦争するという強硬な姿勢を支持する人はきわめて少ないだろう。日本になんとなく(または明確にか?)漂う反中国感情は、日本の経済社会の長期停滞と中国経済のめざましい成長の対比とは無関係ではないようである。観光地を旅行すれば、日本の高齢者(私もその一人だが)とともに、東アジアからの旅行客がきわめて多いことはいまや誰でも知っている事柄である。これは、観光地にとっては自分自身の経営=生活の存続にかかわることであり、否定できない現実であるが、それと同時に屈折した感情をもたらしているようである。このことは、私がこれまで宿泊した旅館の人々のちょっとした発言からも何となく感じられることである。
 しかし、だからといって実際に中国と戦争しようとする人はまずいないであろう。それは現在のグローバル化した世界の中では、日本経済のみならず、世界経済にとって破滅的な被害を意味している。
 ともあれ、北朝鮮の体制側のねらいは、自国体制の存続の保障であり、その交渉相手は米国に他ならない。あらゆる面で対米従属の立場を保持してきた日本など眼中にもないといってもよい。
 もちろん、私は北朝鮮の瀬戸際政策(核開発、ミサイル実験)を擁護しているのではない。実に腹立たしく、困ったことだと思っている。
 しかし、窮地に陥ったアベ政治には、こうした北朝鮮の態度は使える起死回生策となる可能性・危険性がある。また安倍晋三氏は、これまで露骨にそれを利用してきた。「ミサイル発射実験」に際して電車を止めてみたり、NHKに戦時さながらの緊急放送を繰り返させてみたり(それともNHKが忖度して放送しているのか?)、米軍と一緒に北朝鮮に対する軍事的挑発を繰り返しながら、彼の軍事路線、9条改憲を国民に対して宣伝するのに必死になっている。その軍事路線は、特定秘密法、日本の自衛隊が外国の軍隊と一緒に外国で戦争に参加できる体制を整えた安保法制(戦争法)、共謀罪(何をしたら罪になり罰せられるかわからない法律を制定し、政府に対する反対意見・運動を抑止する)などに顕著に表れている。
 少なくとアベ政治にとって金正恩氏が暴走すればするほど、アベ政治=軍事路線にとっては国民的な支持が集まりやすくなることは否定できない。
 
 しかし、仮に万が一、米国が北朝鮮を先制攻撃し、北朝鮮が反撃することとなれば、相手国は米国だけではない。日本国内の米軍基地はもちろん、自衛隊基地、それに北朝鮮が仮にそれらを狙ったとしても、北朝鮮の武器の低い性能のため、日本全体が攻撃対象となることもありうるだろう。
 米軍の傘にしたにいれば安全というのは、神話にすぎない。

 過去の多くの戦争も、またとりわけ二つの世界戦争は、「狂気の政治家」によって、またそれに追随した人々によって惹起されてきた。また、その背景には、経済の破綻(失業と格差)があった。しかし、幸運なことに、現在の経済がどんなに多くの困難な問題を抱えているといっても、20世紀前半のようなひどいものではない。人類は、それなりに賢くなってきている。
 
 われわれが追求するべきは、軍事的挑発とそれによる国民的同化ではないはずである。

 
 

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